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「短編集『O嬢の館』の女たち」
【SM 官能小説】

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第二話 『国会議員の妻・美沙(M225)の潮噴き』-3

(2)
 サングラスを掛けてトレンチコートを羽織った女が怪しい勧誘をするのです。そんな勧誘になびいてくれそうな男性を狙っていました。

何かしら劣等感を抱えているような男性の方が、わたくしを無茶苦茶な目に遭わせてくれて、しつこいプレイで狂わせてくれるんです。本当は汚らしい労務者風の方や、地元後援会の会長のようなスケベエ親父を自認しているような中年男が一番いいのですが、ここは学生の街です。

 学生らしい二人連れ……ニキビ面のいかにも脂ぎった感じの男と背がやけに低い髪をカリアゲた男の二人連れに狙いを定めたのです。いかにも野暮ったい感じで、女に飢えてそうな二人に強引に声を掛けました。

議員の妻の得意技の真綿でくるんだような説得力とお金の力で『O嬢の館』の新規会員にさせて、『M225』の予約を取らせるところまでやらなければならないんです。

 わたくしが二人に渡したお金は、2時間の入室料金と深夜のタクシー代に加えて、お小遣いとして3万円以上が残るほどでした。

女の下半身を好き放題に出来て、大金までもらえるという話です。こんなワリのいい、ウマい話には何か裏がある……二人が懐疑的になって、尻込みするのは当然でした。

「お、おばさん……こんなの、やっぱり、意味わかんねぇよ……金は欲しいけど、遠慮しとくわ」
 カリアゲの男がサイトの猟奇的で禍々しい『ブース』のボカシ画像に興味を示していながら、最後に断ってきました。手渡した一万円札8枚をわたくしに返そうとするんです。

 わたくしは慌てました。

「だ、大丈夫よ。本当言うとね。わ、わたしが……あなた達に遊んでもらいたい『M225』なの。名前は美沙よ。わたしじゃダメかしら?」
 わたくしは最後の切り札とばかりに、正直に告白したんです。素性がバレたりしたら、一生後悔するような醜聞になるのですが……構ってられなかったんです。

 わたくしは凛とした上品な雰囲気を醸し出している、いわゆる上流階級の女です。普通なら彼らがいくら望んでも手に入るような女じゃないんです。美貌にも、肢体にも自信があります。政界ではわたくしは超が付く美人妻で通っているんです。ただ彼らの母親くらいの年齢というだけです。

「ええっ。お、おばさんとヤレルってこと?」
 ニキビ面が素っ頓狂な声を上げていました。
「おばさん、ほんとにこんな変態なこと、平気なの?」
 カリアゲの方も目を白黒させながら、天から降って沸いたようなラッキーな話にやっと飛びついてきたんです。

「おばさんなんて呼ばないで、美沙って呼んで」
 ほんとは『M225』でなければイケナイのに、わたくしは美沙という源氏名で呼ばれる方が好きなんです。
 でも、二人はわたくしの言葉を無視しました。

「おばさん。ちょっとさぁ、ここでサングラスを取って、コートの前を開いてくんない?」
 路地を曲がったところで、カリアゲが意地の悪いことを言い出したんです。

「ど、どうして?」
 さすがの美沙もちょっとカチンと頭に来ていました。
 わたくしを誰だと思ってんのよと、叫びたい心境になっていたんです。

「だってさぁ、変態の証明をしてくんなきゃ……店に入ったらさ、顔もオッパイも見れないみたいだから、おばさんかどうか分かんねえんだろ?」
 屁理屈つけて迫って来たのです。

「い、いいわよ……見せてあげるわよ」
 わたくしは自棄になっていたのです。顔を晒すことに不安はあったのですが、今更引き下がれなかったんです。それほど、わたくしの身体が飢えきっていたんです。

 ビルの陰に入ってサングラスを外すと、ヒエーッという変な声を上げて二人は反応してきました。
「へえっ。おばさん、すっげえ美人じゃん」
「ひょっとして、女優さんじゃねえの?」

 コートの腰のベルトを解いて、上の方からボタンを外し、チラッとだけコートの中も二人に見せました。コートの下は高価なブランド物のランジェリーだけです。しかも、わたくしはドレスを着る時にはブラは着けないのです。薄いニップルパッドで乳首の尖りを隠すだけです。上半身は全裸同然の姿だったんです。

 白で統一したショーツとガーターストッキングだけの美身を薄暗い路上で露わにしていたのです。かすかに甘い芳香の漂う美身です。
「どう?……ヤル気になってくれた?」

 議員の妻なのに、何てこと言ってるの?……この時ばかりは、議員の妻であるという意識が瞬間、頭の片隅をよぎっていました。

 コートの下に何も着ていない露出狂のような女を見て、二人は呆気に取られて生唾を呑み込んでいるだけでした。



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