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銀彩(ぎんだみ)
【SM 官能小説】

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銀彩(ぎんだみ)-6

かつてわたしを抱いた男たちは、愛を囁きながら下半身に淫蕩にぶら下がった自らの中心にあるペニスだけによって淫らな欲情をいだいた。それはわたしに対して罪を意識しない性器だった。そして、わたしにとって意味のないペニスだった。盛りがついたように漲(みなぎ)り、そそり立つペニスは、肉体の輪郭を歪(ゆが)め、すぐに厭(いや)な感じになる。そんな男の姿はとても奇怪で滑稽にさえ見える。むしろ、そんな男に対して無防備に脚を開く自分に嫌悪感さえいだいた。
男たちは自分のものをわたしの中心に捩(ね)じ込んだ。その瞬間から、わたしを支配したと勘違いする。わたしはいつも自分の中を萎縮させ、気持ちを閉ざしたまま男の行為が終わるのをじっと待ち、男の性器にいつも服従していた。
男の荒い息づかいと体液が男のたくましい肉体を柔らかくし、輪郭を溶かし、互いの重なり合った部分だけが花の実をつぶすような音をたてる。あなたは男を愛しているのか……その音は、冷酷にそんな問いをわたしに繰り返しつぶやく。そして果実の皮が破れて粘った汁が吹き出すように精液をたっぷりとわたしの中に流し込んだ瞬間から萎びていく男の性器。わたしの嫌悪感は嘔吐に似たものに変わる。
ふと思った。アルジョンテにはそうなって欲しくない。美しい男のままであって欲しい。だから彼には貞操帯が必要だと思っている。わたしは、彼のからだの中心のあるものが封じられたときから、彼に心を奪われてしまう。彼の従順で、素直な美しい姿は黄昏の光にとてもよく映えている。
開け放した窓から吹いてくる乾いた風がアルジョンテの背中を撫でている。わたしの目の前で跪き、後ろ手に手錠を嵌められた裸の彼は瑞々しいエロスに充ちた潤んだ瞳でわたしを慕うように見つめている。瞳は、わたしの堅く閉ざされているはずの腿のつけ根をゆるませ、肉洞の奥に拡がる黄昏の海を波立たせる。彼の中では、芳醇な香りのする蜜のような粘りをもつ精液がわたしだけのために泉のように湧いている。けっして放出されることのない精液を溜めた彼の身体はとても美しくなる。

 
以前、つき合っていた青い目の男は、ひとまわりも年下の新進気鋭の指揮者だった。彼と共演したことがきっかけだった。何よりもわたしは、その男を自分のものだけにして、彼が奏でる音楽を、音楽を生み出す彼の心と肉体を、自分のものとして肉奥に深く刻むことを欲望した。彼はすべてにおいて欲望を感じさせる男だった。指揮台に立った彼のタクトはわたしを魅了し、旋律に揺れ動く彼の身体は、奏でられる音楽以上に欲望を感じた。
演奏会のあと、彼はわたしをホテルによく誘った。全裸になった彼はわたしの足元に跪き、まるでわたしを安心させるようにわたしの脚先に接吻し、わたしに愛を囁いた。彼はわたしの前で誇らしげに自らの肉体をさらした。背が高く、肩幅の広い胸郭も、たくましい腕と太腿も、引き締まった筋肉を示し、彫刻のような翳りと光沢を溜めた身体をしていた。毛深い身体の胸毛も腋窩の毛も、そして男の中心にたくましく突き出したものを囲う草むらも濃厚で艶々と輝き、匂い立ち、わたしは彼の肉体に魅せられ、憧れた。
わたしは彼といることで幸福を味わった。彼と向き合い、食事をともにし、互いの視線をくすぐり、手を握り、指を絡め合った。キスはとても愛欲に充ちていた。彼はセックスと同じようにキスが上手だった。わたしの指先へのキスも、足先へのキスも、彼のキスはすぐにわたしの肉体を疼かせ、熱を帯びさせた。

いつのまにか愛していた……いや、愛しすぎるようになっていた。ただ、彼のセックスは饒舌(じょうぜつ)過ぎた。饒舌すぎることがわたしを冷めさせた。そして彼には女の噂が絶えなかった。いろいろな女の香水の匂いがわたしを抱くたびに変わった。やがて彼のものを含んだわたしの中が急速に萎縮し、冷めていくことを感じるようになった。
きみは男を去勢させる女だ。あら、どうしてそう思うのかしら。ぼくはきみの軀(からだ)の中に、きみ自身の悦びを感じない。そう思わせるところがぼくに去勢を強いているように思うのさ。男はそう言いながら笑い、わたしの肉奥に深くペニスを突き立て、腰を烈しく蠕動させた。
わたしはまるで歯を立てるように肉襞を彼のものに絡ませた。滲み出す互いの粘液が混ざり合い、まぶされた鱗粉のように煌めく。飢えた肉襞の蠢きを止めることはできなかった。わたしの足指がそそり立ち、指爪は彼の軋む背骨に食い込んだ。


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