目の前の男に嫉妬して-2
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真由美はホテルのチェックインを済ませるということで、金治と高嶋の二人が先にホテルの近くの居酒屋に入った。
二人の時間はそれなりに金治に緊張があったものの、二人となっても高嶋は態度を変えず接してくれた。
話しながら高嶋は、にこりと爽やかに微笑む。
こんなにも洗練された佇まいは、この安っぽい居酒屋に似合わないと金治は思ったが、それでもここを選ぶような気さくな雰囲気も高嶋は兼ね合わせている。
社内でも人気があるのだろうなと金治は思った。
緊張しつつも、程なくして真由美がやってくる。
高嶋や真由美は、金治に話題を振りつつ、会話で取り残されないように彼を扱った。
そんな中、高嶋に対する金治の嫉妬心が徐々に薄れていく。
はじめの緊張など忘れ、この時間がとても楽しく感じられた。
「ーー十九時半になりましたね。二軒目でも行きますか?」
飲み出してから二時間ほど経った頃、自らの腕時計に目をやった高嶋が切り出した。
「ん〜お腹いっぱいだし、良かったらホテルで飲みませんか?お部屋、結構広かったんです。ソファも二人がけだったし。あたし、ベッドに座るので」
その言葉に、徐々に薄れていったはずの金治の嫉妬心に火がつきそうだった。
自分だけをホテルに誘ってくれるかと思ったのに、高嶋も部屋に入れるということはおそらくそういう行為をしないということだろうと、金治は思ったからだ。
「時任さん、さすがに女性の部屋に入るのは」
高嶋は気まずそうに答える。
「え〜?高嶋さん、あたしの部屋入るの嫌なの?」
少し酔いが回った真由美は、敬語を使わず問いかけ、高嶋をじっと見つめる。
「そ、そういうわけではないですが」
「きちんと夫にも連絡入れますよ。高嶋さんと佐田くんと部屋で飲んでるって」
「わかりました。それ言われちゃうと断れないですね」
高嶋は少し気まずそうに、金治は不満そうに、会計を済ませ居酒屋を出て真由美の部屋へと向かった。
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「先程はご馳走になってしまって。ありがとうございました」
ホテルで、真由美は高嶋に向かって言った。
コンビニで酒を買い込んで、缶ビールを片手に三人は談笑している。
「いえ、とんでもない。安い居酒屋で」
ベッドはダブルベッドで、ベッドの横に二人がけのソファーがあり、ビジネスホテルというよりはシティホテルのようで、先程真由美が言った通りわりと広めの部屋だった。
一時間ほど談笑したころだっただろうか、高嶋がトイレに立ったタイミングだった。
ベットサイドにある小さなテーブルに缶を置いた真由美は、金治の隣に座る。
「不満そうな顔してるね。あたしとヤリたかったから?」
「…えっ」
見透かされたようで、金治は恥ずかしかった。
「ヤキモチ…やきました。すみません…」
「エッチ…今日は仕事で来てるのに」
耳元で囁かれたかと思うと、耳元に真由美の唇が触れた。
「高嶋さんが…いますから…」
「ん…?」
金治の唇と、真由美の唇が重なる。
「何のためにダブルベッドにしたと思ってるの?帰さないんだから」
そんな風に二人の身体が密着している時だった。
トイレのドアが開き、高嶋がその光景を目にしてしまう。