満たされる身体-3
金治はカップの部分だけをずらし、真由美の胸の頂きに唇を寄せる。
そして歯を、力強く立てる。
「あ、痛いっ…!んん、やだ…!本当に、やめ…て…!」
金治は乱暴に真由美の体を扱いながら、スカートの中に手を這わす。
「こんなの、嫌…!やめて…お願い…。人が来たらどうするの…?」
「俺にレイプされたって言えばいいんじゃないですか」
「何で。そんなこと言えるはずないでしょう?」
「でも合意だとも言えないでしょう。時任先輩が不倫してることになっちゃうから」
「そんな言い方…」
金治は自暴自棄になっていた。
真由美にとって自分が不安定な存在であることが、浮き彫りになってしまったからーー
金治が真由美にさらに乱暴しようとしたとき、真由美は自らの手を金治の背中に回した。
どきん…と不意に金治の胸が高鳴り、金治は手を止めた。
「そんな言い方しないで…。お願い。
佐田くんがあたしと会社でしたいと思ったら、させてあげたいと思うのよ?そんな相手、佐田くんだけなんだから。
今日はあたしとしたいわけじゃないんでしょう?話がしたいときに、こんなのはダメ」
ぽんぽん、と金治をなだめるように背中を軽く叩く。
金治の力が抜けたところで、真由美は起き上がり自らの服を直した。
「嫌いになったりしないから大丈夫だよ」
泣きそうな顔の金治の頬に手を添えながら、真由美は言った。
「すみません…」
あまりに冷静な真由美に対して、それしか返す言葉がなく金治はそっと更衣室から出て行った。
「待って…」
真由美は荷物を置いたまま急いでロッカーの鍵をかけて、二人の部署に向かう金治を追う。
「待って、佐田くん」
振り向かない金治の手を取った。
金治は、長い廊下でやっと振り返る。
「見られたらどうするんですか」
「かまわない、後輩があたしのせいで嫌な思いしたならフォローするのは当然でしょう」
「俺が、あんなことしてもですか」
「理由があってやったんだろうから追いかけたの。理由を聞くのもあたしの務めだと思うんだけど。
ーーどうしたら佐田くんは気が済むの?さっきみたいなことしたら気が済む?そうじゃないでしょ?
そうじゃないと思ってるから話を聞かせて欲しいの」
金治は何も言えなかった。
見えない夫の影に、ただ嫉妬をしているだけなのだ。
夫が側におらず、真由美の家にも泊まれて、さらにどうやら真由美の夫は金治の存在を知っているらしい。
それ以上のいい状況をどうやって真由美が作り出すというのだ。
(セックスするだけの相手だなんて、はじめからわかりきったことなのに)
「今日、行ってもいいですか」
「それで気が済む?」
「わかりません…。分からないんです…」
さすがの真由美も、ため息をついた。
金治はそれが心苦しかった。