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『真夏の遊戯』
【学園物 官能小説】

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『真夏の遊戯 side:B』-4

「じゃあ…、俺だけでいい…。つーか…、俺だけじゃねーとイヤだ…。葵が変質者にやられそうになったとき…、殺してやりたいなんて思ったのは、あんなヤツに葵が奪われるのがイヤだったから…。その…、俺以外のヤツに…」
葵はただじっと聞いている。
「だから…、キスしたヤツのことも…、すげーむかついてる。やっぱ殴ってやりてーくらい…。葵に考えなしで手出すなんて…、チクショウ…。なんてことすんだよ…」
手に力をこめた。
「俺だけが…、葵のことちゃんとわかってると思ってたんだ…。こんな…、独占欲強いなんて思わなかった…。バカみてぇ、俺…」
「神楽ちゃん…、あたしうれしいよ…」
両腕を伸ばして俺の首に絡めた。
「あたしは…、ちっちゃい頃からそんな神楽ちゃんが好きだもん…。正直で…、強くて…、いつでも守ってくれる…」
「お、おい…」
ドギマギ。
「あたし…、神楽ちゃんとずっと一緒にいたい…。でも前にみたいに…守ってもらうばっかじゃいやだから、がんばって強くなりたい…。お荷物にならないように」
「バカヤロ、そんなふうに思ったことなんて…、ねぇよ…」
思わず、ぎゅっと抱きしめた。
感覚としては…、昔と同じつもりだったんだが、あんまり強く抱くと壊れそうだった。
オンナって柔らかい…。
意識すると動悸が速くなる。
こんなにくっついてると葵に聞こえちまいそうだ。
「かぐらちゃ…」
きつく抱きすぎたか、葵がうめく。
「ごめ」
「ねぇ、なんか声しなかった?」
ぎくーん。
また茂みのむこうで声が聞こえた。ご新規サマだ。
「まーた。気のせいだろ。お前ビビリ過ぎ」
「だって…」
その声はやっぱりアツヤと同様のクラスメイトのレンとナツキだった。
胸元で葵が俺を見上げてる。
(しーっ)
人差し指を口に当てた。こんなトコ見られたら、誤解される。
二人が行ってしまうのを確かめて、葵を離した。
「ふう…」
ヘンな汗が流れたぜ…。
葵はというと、クスクス笑ってやがる。
「なんかほんとにあの時といっしょみたい」
「楽しんでる場合かっ」
「ね、あっちの方行こうよ」
「お、おい」
葵は俺の手を引っ張ってぐんぐん奥の方へと行く。
「子供のときに戻ったみたい。探検ごっことかしてたじゃん」
「お前っ…、怖がりのクセに」
「だって神楽ちゃんがいるもん」
にっこり微笑んでいる。
ああ、その顔は変わってないんだな…。
不意に視界が開けた。
「わあ」
葵が感嘆の声を漏らす。
林を抜けていた。そこは小高い丘のようだった。
何より驚いたのは空いっぱいに広がる数多の星だった。
「へぇ…、こんなトコあるんだな…」
スタート地点だった広場はバンガローの灯りやキャンプファイヤーの火で明るかったから、こんなに星が出ていたのには気づかなかった。
位置的には逆サイドになるのかな。
「すごいきれー…」
葵は素直に感動している。
その子供みたいな表情に俺の胸のうちはホッとしていた。
なんだか本当に昔に戻ったみたいだ。
「昔さ、誰にも内緒て秘密基地作ったでしょ?覚えてる?」
「ああ」
「ここも秘密の場所にしたいね」
無邪気な笑顔を俺に向けた。なんだか甘酸っぱい感じがして、照れクサイ。
その場に並んで座り込んだ。
「秘密基地で遅くまで遊んでたら、後ですごい怒られたんだよね」
葵が饒舌に昔のことを話す。
それは自然に発せられているものか、昔の気持ちを取り戻そうと必死なのか…。
ふと、葵の言葉が止まった。
その表情には陰りがある。
「どうした?」
「なんかね…、昔のまんまでいられたら、って思ったの」
「……」
「でも…時間が経つって、変わってくものがあるってことだよね」
さっきまで頭上の星のあった葵の視線は何時の間にか俺のほうに向けられていた。
「あたしね、さっき神楽ちゃんがたばこ吸ってたの見てびっくりした。いつのまにこんなことするようになったのかなって」
「やっぱり…?」
葵の前ではやめとけばよかったかな…。
俺の表情を読んだのか、あわてて付け足した。
「ちがうの。ほんとにびっくりしただけ。だって、神楽ちゃんとはずっと話してなかったし。…あたしが避けてたから」
弱々しく微笑む。俺にはそう見える。ムリに笑っているような…。
葵はほんの少し顔を赤らめる。
「それと…抱き締められたときにね、昔とは違う…、なんてゆうかほんとに男の子なんだなって…。背なんかあたしと変わんなかったのに」
「俺そんなに変わった?そりゃ体つきは…、それはお互いサマだし」
「もちろん変わってないトコだってあるよ。優しいとことか、仕草とか」


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