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つまみぐい
【その他 官能小説】

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のぞかれた家政婦-4


「すごい……」
 まず圧倒されたのは、壁一面を埋め尽くすおびただしい数の書籍たちだった。そのほとんどが小説であることは本をあまり読まないかほりにもわかった。
 部屋の間取りは八畳くらいはあるだろうか、壁際の机の上にはノートパソコンが一台と、書き損じたであろう原稿用紙が筆記具と共に置いてある。
 天馬利文の職業は小説家だと思われた。だとしても推理作家には見えないし、どちらかと言うともっと難解な本を書きそうな気がした。
「これって、まさか……」
 一冊の文庫本を手に取ったかほりは、そのタイトルに視線を落として思わず絶句する。それは「見習い女中 淫らな接待」という官能小説だった。唾を飲み込み、興奮に震える指で項をめくってみた。
 時代設定は異なるものの、今のかほりと利文に近い立場の男女が体の関係に溺れていくという内容だ。読み耽るうちに心臓は早鐘を鳴らし、濡れ場のシーンになると今度は膝の内側がそわそわして落ち着かなくなる。目を背けたくなるような生々しい性描写に頬を赤く染め、いつしか我を忘れてさまよう指先を自分の体に這わせていく。
「はあ……」
 エプロンを外し、片手で胸を揉む。もう片方の手はおのずと下半身へ向かい、ジーンズの上から股間をさする。直に触れないのがもどかしい。
 男の匂いが立ち込める部屋で自慰をおこなうのがこんなにも快感だとは、女盛りのかほりは知らなかった。不謹慎な行為だとわかっていても、快感をむさぼる指を止めることなど出来ない。
 密室である。とうとう我慢ならなくなってジーンズを下ろし、下着越しに陰部の温もりと濡れ具合いを確かめたあと、その最後の一枚も膝まで下ろして女性器全体を指でこねくり回す。
「ん……、あ……、ふん……」
 どこを触っても気持ち良い。ねっとりと指に絡んでくる愛液がいやらしい匂いを放ち、肉の花びらを割り開くと卑猥な音を立てて分泌量も増していく。
「もうだめ……、はあん……」
 クリトリスへの刺激だけであっけなく上り詰めてしまう。下唇を噛んで必死にあえぎ声を堪えながら絶頂を迎えたかほりは、務めを果たした風俗嬢のようにその場に腰から砕け落ち、ふわふわと漂う余韻にしばらく身を任せる。
 風邪をひかないように暖房を点け、久し振りのオナニーを再開する。そっとクリトリスに触れると新たな欲求が胎内から産まれてくるようだ。
 膣の入り口をちゃぷちゃぷと揉んで十分に潤してから指を中に入れてみる。
「あっ!」
 膣壁を被う女の粘膜はところどころが波打っていて、そこら辺を念入りに刺激すると鋭い快感が生まれてすごく気持ち良い。癖になる感触、病み付きになる指の出し入れに時間を忘れて目を閉じる。
「あっ……、うっ……、いく……」
 オナニーをしながら床に突っ伏してかほりは果てた。誰に見せるわけでもなく、指を咥えた陰部の割れ目をひくひくと蠢かせて夢見心地のひとときを過ごす。
 私はここへ何をしに来たのだろう──そんなふうに無理矢理体を起こして官能小説を本棚に戻し、中途半端に満たされた欲求を引きずって部屋を後にする。
 母屋に戻るとちょうど利文が帰って来て鉢合わせした。もう少し時間がずれていたら彼に行為を見られるところだった。
「おかえりなさいませ」
 かほりは平静を装って頭を下げた。手を洗う余裕がなかったので指にはあそこの匂いが付いたままだ。
「ただいま。おかげさまで大きな仕事が決まりそうです」
「おめでとうございます。あ、お昼ご飯は何が良いですか?」
「うーん、そうだなあ……」
 考え込みつつも利文の視線はかほりの手に注がれている。それに気付いたかほりは慌てて手を隠し、「温かいおうどんでも作りましょうか」と言って逃げるように台所へ駆け込んだ。
 


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