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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-3rd-8

「きっちりと休んだら、もう一度顔を出せ。一から鍛え直してやるよ」
「……あぁ」




ジムを出た龍矢は、家路につくためしばらく歩いていると、見知った顔を見つけた。見知ったと言っても一方的にこっちが知っているだけなのだが。

向こうもこちらに気付くと、雄然と歩いてきた。

『メシでも食っていかないか、ジャパニーズ?』
「いいぜ……」

龍矢が発見した相手、それはダミアンだった。
二人は近くのレストランへと足を向けた。



二人はテーブルに座ると、龍矢達を知っているのか、やたらと目が興奮しているウェイターを注文をとって追い払った。

『この街はいいなぁ、みんな夢とか希望に溢れてますってツラが多くて』
「……」

龍矢は黙ってダミアンの話を聞く。ウェイターが二人にアイスコーヒーを持ってきたが、二人の気配に圧されてグラスを置くとそそくさと立ち去っていった。

『この前の会場の奴ら見たか?みんな声を出すのも忘れて泣きそうな顔してたんだぜ?たまんないねぇ』
「お前は何のためにボクシングをやっている」

龍矢の問いにダミアンは即答した。




『生きるため』




ダミアンの挑発的だった態度が一変する。
ダミアンは答えを続けた。

『俺が生まれた街はヒデぇ場所でな、毎日が生き残りを賭けた戦いだった。パンを盗んで両足を歩けないほどに砕かれた奴もいたし、上手く世渡りが出来なくて飢えで死んだ奴もいた』
「それが嫌になったからボクシングを?」

龍矢が問うと、ダミアンは挑発的な顔を戻していた。

『人を堂々と殴ることが出来て、勝てば金は貰えるし女は寄ってくる……最高だろ?』

龍矢の中で激情が高まっていく。まるで、自分の夢を馬鹿にされているような気がしてならなかった。

『王者になれば今まで以上に金が入るんだ。分かるか?この世は金と力なんだよ。力があれば金が入る。金があれば酒と女が手に入るんだ』

ダミアンの言っていることは真理だった。ボクシング王者になれば、一度勝つ度に普通の労働者の賃金などとは比べ物にならないほどの金が転がりこむのだ。無論、勝ち続けることが最低条件なのだが。

ダミアンはひとしきり喋り終えると、アイスコーヒーに口をつけた。


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