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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-3rd-7

「容赦ぁしねえぞ」
「来い」


練習をしていたジムメイトたちも好奇心からリングの回りに集まり始めた。




シュバッ!!!




張り詰めた空気を切り裂くかのように、龍矢はミゲルに拳を打ち出した。馴れ合いでもなく、冗談でもない本気の拳を。
ミゲルはまだ拳を出さない。このままだと確実に龍矢の拳はミゲルの顔面にめり込み、マットに這わせるだろう。
誰もがその結果を信じて疑わなかった。だがその時、ミゲルの体が微かに動いた。




ズドンッッ!!!





マットに沈んだのは、ミゲルではなく龍矢だった。

「がっ……!」
「ライト・クロス」

龍矢はなんとか立ち上がったが足元がおぼつかない。そんな龍矢をよそに、ミゲルはそのトリックを説明し始めた。

「カウンターってのは経験と反射速度がなせる技だが、この技は普通のクロスカウンターとは違う。どっちを打ち込まれたか分かるか?」
「右…だと思う」

龍矢はおぼろ気にしか答えられなかった。それほどの一瞬だったのだ。

クロスカウンターとは相手の拳とは逆の拳を打ち込む技だ。
相手と自分の拳が交差する様からその名が付いたと言われる。

「そうだ。右と右のカウンター、威力は今食らったから分かるな?」

龍矢は決して打たれ弱いわけではない。今までの試合はほとんど近距離での打ち合いであり、勝利の結果はそのタフネスとパンチ力、そして持ち前の野生で切り拓いてきたのだ。

「今から三日は休め。練習はそれからだ」
「ミゲル、俺はやれるぜ!」

龍矢は意気込んではいたものの、その膝はまだ笑っていた。

「この技は相手の力に自分の力を載せるものなんだ。ヘッドギア(頭部を守るために装着する道具)も無しにいきなり食らったんじゃ一日二日じゃダメージは抜けねぇよ」

ライトクロスとは、相手の右の拳を限界まで引き付け、頭を左にスリップしながら右の拳を相手に突き出す技だ。
当たる瞬間、打つ相手は必ず全体重を乗せる。それに自分の全体重を乗せた拳を撃ち込む訳なので、まともに決まると大体の相手はたたらを踏むか、倒れるだろう。

「この技に必要なのは、小手先の技術やスピードじゃねえ。相手の大砲に目をそらさずに向かっていく勇気……これが必要なんだ」

基本的に、カウンターは相手の力を利用するパンチなのだ。もし失敗などしたら、自分に洒落ではないダメージが降りかかるのだ。

だが、ミゲルは龍矢を信頼していた。だからこそ危険を承知でこの技を教えたのだ。


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