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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-3rd-5

待合室に行くと、椅子にはレイラとマリア、そしてダニーが座っていた。皆が龍矢に気付くと、レイラは立ち上がり龍矢に向かって歩き始めた。

『カイは?』
「大丈夫、もう寝ましたよ」
『そう、よかった……』

レイラの瞳が少し赤くなっている。どこかで泣いていたのだろう。だが、昔のレイラに一目惚れしていた自分ならともかく、今の龍矢では彼女を励まし勇気付けることは出来そうにもなかった。

レイラは龍矢を促して一緒に廊下へと消えていった。マリアは追い掛けようとしたが、ダニーに肩を叩かれ追いかけるのをやめた。



「鬼夜叉は?」
『さすがに病院にまで鬼の面を着けてはこれないでしょ?』
「確かに…」
『……だけど、カイも本当バカよね。貴方と闘うとか言って聞かないからこうなるのよ』
「レイラさん、それは違う!カイは自分の夢を諦め…」
『わかってるわ。わかってる……けどね、あの人がやられた事実は変わらない。顔も、拳も、彼の夢までもあいつは奪ったの』

あいつとはダミアンのことだろう。龍矢は黙りながらレイラの言葉を聞いていた。

『私にもし今銃があれば、あいつを撃ち殺してる…。私の手に今ナイフがあれば、私はあいつを刺し殺すわ!』
「レイラさん……」
『カイは自分の夢のために闘ったのだから、仕方がないと思っても、心配した私の身にもなってほしいの!』

レイラの目の端から涙が溢れる。きっとレイラは悔しいのだろう。
自分の愛する人を完膚なきまでに叩き潰したダミアン対する憎悪は今の龍矢では推し測れなかった。もしかしたら彼女は本気で殺したいと思っているのかもしれない。

龍矢はレイラの肩に手を置き、語りかけた。

「……貴方の思いも、カイの夢も、全部俺が受け継ぎます。だから、泣かないで下さい」
『タツヤ……』
「貴方には、いつでも凛としていてほしいんです。だから、泣かないで」

龍矢はそう言うと、レイラの頬を流れていた涙を指で掬(すく)いとった。

「これからは、カイと一緒にいてやって下さい。ダミアンは、必ず俺が倒しますから。だから、二人で……幸せに生きて下さい」

龍矢にとって、レイラは初恋の相手であり、シアターで活躍する様は同じ職場のマリアだけでなく、龍矢にとっても憧れでもあった。
だが、今のレイラはどこにでもいる一人の女になっていた。
好きな男の身を案じ、好きな男のために涙を流している。

「……カイの側にいてあげて下さい」

龍矢は一言そう言い残すと、マリアとダニーが待つ待合室へと足を向けた。
今のレイラに必要なのは、自分の薄っぺらい励ましよりも、愛する人の温もりの方が確かなのだ。

レイラはしばらくその場に立ち尽くしていたが、やがてゆっくりとカイの病室へと歩いていった。


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