dream・road〜scene-3rd-1
ここはアメリカ、ニューヨーク。
スポットライトが照らすリングの上、御堂 龍矢(みどう たつや)はそこにいた。その腕の中に変わり果てた姿の男を抱いて…。
「……てめぇは俺が必ずぶっ殺す。待ってろ!!」
『カカッ!期待してるぜ、ジャパニーズ!』
龍矢の視線の先には敵がいた…真の敵が。
話はこの時より二ヶ月前に遡(さかのぼ)る……。
二ヶ月前……。
季節も夏の日差しを強め始めた頃、龍矢はいつも通りにカフェで働いていた。龍矢は鬼夜叉(おにやしゃ)との激闘を経、自分の信念に気付いた後劇的な成長を遂げていた。
今の彼にはもう迷いはなくなっていた。龍矢が怪我を治している間に王者の座へ昇りつめたカイと闘う…。
今の龍矢にはこれこそが夢だった。
「ダニー、オリジナルとクラブサンド入ったぞ!」
「OK!!任せな!」
龍矢がカフェのマスター、ダニーに注文を告げた時、入り口の扉を開ける音が聞こえた。
「いらっしゃ……」
『……カフェオレとベーコンサンドを』
店に入ってきた男を龍矢は知っていた。
ダニーもその男が何者なのかに気付いた。
「アンタ、もしかして?」
『アレン・ゴールドバーグ』
「やっぱり!タツヤ、チャンピオンが来たぜ!」
「……!」
「タツヤ、どうした?」
ダニーの問いにようやく龍矢は応えた。
「知ってるさ……。ちなみに、その名前はリングネームで偽物だろ?本名はカイ・オーウェン……違うか?」
『昔の名前だ』
「オーウェン……?オーウェンって、あのオーウェン社の?」
『やめてくれ。そんなことを言いに来たわけじゃない』
カイが呟くとダニーはばつが悪くなったのか、注文の品を作るためにキッチンに向かった。それを確認すると、カイは龍矢に話しかけた。
『今、話せるか?』
「…ちょっと待ってくれ。まだ注文をとり終わってない」
龍矢は他の客の注文をとりながら、頭の中を整理していた。
自分の探していた人が今すぐそこにいる…。聞きたいことも、言いたいことも沢山あった。はずなのに、いざ目の前にカイがいるとなにも話すことが出来なかった。
一通り注文や客の出入りが落ち着いた後、龍矢はカイの隣に座った。
「……で、何しに来たんだ?」
『ずいぶん口調が刺々しいな…まぁいいさ。今日はこれを渡しにな』
そういいながらカイは封筒を龍矢に渡す。開けて中を見てみると、そこにはチケットが入っていた。