dream・road〜scene-2nd-13
「タツヤ…さっき、シアターの人に聞いてきたんだが、一年…休みをくれるそうだ。」
「ダニー…」
瞳から涙をこぼさぬようにしているマリアに代わって、ダニーは龍矢を説得し始めた。
「子どもが産まれたら、シアターのバイトが面倒を見てくれるらしいし、俺だって店に置いてやる…マリアだって望んでるんだ、どうだ?」
「ダニー、だけど…あんたに迷惑は掛けたくない」
「何バカ言ってやがる、お前が俺の店に来てから迷惑尽くしだよ!…だから、今更一つ増えたところでなんてことないさ」
龍矢はダニーのことを親の様な存在だと思っていた。もし、流行り病で逝かなければ、自分の親父もこんな人だったのかもしれないと思うほどに。
「…俺にも息子がいてな、まぁ生きていりゃお前くらいだろうな。妻と一緒に病で逝っちまってなぁ…だからかな、お前とマリアが俺は可愛くてしょうがないんだ。息子や娘に思えるんだよ」
「ダニー、だけど…」
「いいか、タツヤ。子はな、親に迷惑を掛けるのが仕事なんだよ!だから…気にするな。俺も、孫の顔が見てみたいしな」
「ダニー……ありがとう…」
龍矢はマリアに向き直ると、真剣な表情でマリアに問いかけた。
「マリア…後悔はしないか?」
「うん…大丈夫」
マリアからの言葉を受けとると、龍矢は今度は医師へと向き直り、深々と頭を下げた。
「先生…マリアを、よろしく頼みます!」
『ええ、私たちも全力を尽しましょう』
一度は地に堕ちた翼を拾い集め、龍矢は再び夢へと突き進む。その翼にマリアの夢をのせて。
少年たちの夢は着実に加速度を増し、終わりへと近付きつつあった。
はたして、終わりにあるのは希望か絶望か…それはまだ、誰にも分からない…。