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変容
【SM 官能小説】

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変容-11

いつのまにか建物の外で烈しく降り出した雪が、窓の外の黄昏の風景に斑な白い文様を描いて
いる。窓の外の雪と鋭く光る遠雷の鋭い光が烈しく溶けまじっているというのに、私たちがい
る広間には静寂がひたすらたちこめていた。


「きみが書いた小説を読ませてもらったよ。きみは神父である父親と自分の母親の純愛すぎる
物語をずっと信じ込んでいた。神に仕える敬虔な神父が聖母の理想を胸に抱きながらも愛した
女性、母の麗子…。そして、きみはふたりの子供として生まれた…。ただ、あくまできみが信
じ込んでいる架空の話だ…。

きみはこの絵の中の神父と犯される修道女がだれであるのか、すでに気がついている。神父は
《きみが父親だと信じている男》であり、神父の前で犯される女は、麗子というきみの母親で
ある女性だ。聖母の理想を描いたふたりは、悪徳と苦痛という美しすぎるものに取りつかれた。

神父は自分が愛した麗子が目の前で犯されることを望み、彼女もまたそれを望んだ。神父も彼
女も美徳と禁欲と言う呪縛から解き放たれようとしていた。それが邪悪なものであっても美し
い物語だとは思わざる得ないものだ。きみはそれを知っていて『聖夜』という欺瞞に充ちた小
説を書いた…」

「やめて…やめてくれないかしら。なんの根拠があってあなたはそんなことが言えるの」
私は彼に対して悲鳴のように叫んだ。

「修道女を犯す、獣のような男は罪人だった。逃走中に逃げ込んだこの教会で神父とこの女が
望むとおりのことを行った。何を望んだのかはこの絵のとおりなのさ。それが禁欲の果てに愛
するふたりが望んだことだ。女は獣のような男の種で身籠り、生まれたのがきみだということ
だ…。きみの父親は神父ではなく、あの醜悪な獣のような罪人だった…」

 私はぶるぶると震える唇を噛みしめた。こんな絵が描かれていたことを私は知らなかった。
サタミは小刻みに震える私の肩を強く抱き寄せて耳元で囁いた。

「きみは麗子という母親の過去を知らない。あの獣のような男は、修道女になる前の彼女を
すでに強姦したことがあったのだ。そして彼女はおれを生んだ、その後、彼女は赤子のおれを
捨て、聖母の顔をして修道女になった」

ど、どういうことなの…。私は頬を強ばらせながら、サタミの方を振り向いた。脳裏で混乱し
ていたものが渦を巻きながらひとつの黒い塊となり凝縮していったとき、私は初めて彼の言葉
の意味を理解した。

サタミは薄らとした笑みを浮かべ、絵を見入りながら言った。「この獣のような男は、十数年
前に死んだ。獄中での病死だった。おれは男の死の直前に彼からすべてを知らされた。わかっ
ているはずだ……きみとおれは、強姦魔という同じ男の種で生まれた、血がかよった兄と妹と
いうわけだ。そして、おれときみはすでに禁断の性を交えた良きパートナーというわけだ。
いや、兄と妹の性交という実に美しき悪徳を身に纏った至福の関係といった方がいいのかもし
れないないな…」


彼に操られる言葉はまるで生きた蛇のように絡み、解け、華麗な輝きに潤み、毒々しい棘をも
って私の心を喰い絞める。私の膝が小刻みに震え、足元がすくわれたようにふらりとよろめく
と彼は私のからだを抱きとめた。

「おれたちは、この絵に永遠に祝福され続ける……とても素敵なことだと思わないか……」




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