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変容
【SM 官能小説】

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変容-12

 サタミの執事という老人が用意した地下室こそ私たちにふさわしい、そして、私たちが必要
としたもうひとつの場所だった。

天井から垂れ下がる鎖の束、煉瓦色の壁に打ちこまれた磔木、ざらざらとした石床に埋められ
た鉄の足枷。そしてさりげなく置かれた鈍色の重厚な金属で造られた三角錐の楔台……それは
中世ヨーロッパで魔女の拷問に使用されたものだった。
鋭利に尖った部分が私の眩暈を誘い、窪みを泡立たせた。サタミは知っていた…それが私の
空洞になった欲望を掻き立て、肉奥から自白をえぐり出すことに必要なものであることを。


全裸に剥かれた私の肢体が天井からだらりと吊るされる。両肢のあいだに跨がされるように添
えられた楔台……その尖った先端から冷ややかな金属の感触が内腿に伝わってくる。足先が微
かに床に触れるところまで吊り上げられ、伸び切った私の肢体の頭上で革枷によって括られた
手首が喘ぎ、繋がれた鎖を握り締めると、錆びた鎖がギシギシと不気味な音を響かせる。

開かされた股間の太腿のつけ根の窪みに、三角錐の先端がわずかに触れるくらいに置かれた楔
台が、まるで蛇の目のように私の漆黒の繊毛に覆われた割れ目を淫靡にうかがっていた。

私がどういう状況にあるのか、それは明らかだった……身体の重みをささえるように鎖を握り
しめた私の掌が一瞬でも弛んだ瞬間、沈み込む私のからだの窪みに楔の先端が無残に突き刺さ
るのだ。


床に叩きつけられる鞭の音……。サタミは薄笑いを浮かべ、鞭を空に振りながら私のからだの
まわりをゆっくりと立ち回る…まるで拷問の執行人のように。

ビシシッー………

 突然、私の背中に振り降ろされた鞭の音とともに鋭い痛みが走る。鞭の音と痛みは、私の瞳
の中を万華鏡のように歪ませる。私の肌に撥ねる鞭の美しい音は、私の心と体をふたたび冴え
冴えと芽生えさせようとしている。

鞭の先端は私の身体のあらゆる部分にのびてくる。繰り返し打ちつけられる鞭がもたらす痛み
の波動が、まぶしい光が、私の肉洞を充たし、疼かせ、淡い幻覚へといざなっていく。
部屋の壁には全身を映しだす大きな鏡が嵌めこまれ、私は自らの苦悶の姿を嫌でも見なければ
ならなかった。それがいっそう私の欲情を深め、鏡は彼の瞳となって私を辱めた。

鞭が空を切り、しなりながら私の臀部に襲いかかる。尻も、背中も、腋窩も、乳房も、脇腹も、
太腿も…そして、乳首を裂き、陰毛を剃り、尻の切れ目に撥ねる。背中が弓のようにのけ反り、
下半身がよじれ、嗚咽が迸り、鎖を握り締めた指先がもがき、足指がきゅっとそり返る。

鞭は鋭く私の肉体をこじあけ、打ち裂き、焼けた鉄鏝で烙印を押すように、烈しい痛みを私の
肌に刻んでいるというのに、彼から与えられるということだけで心と肉体のすべてのものが溶
け合い、高揚していった。そして私は彼を一瞬たりとも意識の中から失うことはできない……
なぜなら彼を意識の中で失った瞬間、私の手がゆるみ、鋭く尖った楔が私の中を貫くのだから
……。

彼の巧みな鞭の振舞いは、とても美しいものだった。
洗練され、淫蕩さに充ち、優雅な曲線を描き、私を薔薇色の痺楽に引きずり込んだ。私の窪み
は至福に充たされ、湿り、澱み、飴色に粘っていく。

 肌に撥ねる音は、彼への敬虔な貢物であり、私の美しい悦びを奏でているようだった。重々
しく空気を擦る音は、やがてひとつの旋律となっていく。それは、メタモルフォーゼン…私と
彼の心と肉体がひとつの音楽となり、未知の深淵へいざなわれ変容していく。

彼と私の中に流れる血は同じなのだ…それが危険な悪徳の血であろうと、私はそれを認めるし
かない。私は彼を欲しがり、欲しがる自分を否定しない。眼を閉じ、耳をふさぎ、心を閉じよ
うとしても彼がいた。なぜなら、彼は私の愛であり、苦痛なのだから。

ビシシッッーーー、ビシッ…


 サタミの鞭がふたたびしなった、肩甲骨から臀部にかけて鋭い痛みが電流のように私の中を
走り抜け、私は朦朧とした恍惚の悲鳴をあげた。そして、次の瞬間、全身の力が抜けると同時
に、私の掌が弛み、私は自分の窪みのなかに烈しい血潮の飛沫を感じた……。



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