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時計を見ればもうすぐ19時。
仕事を終えた、筒井くんがもうすぐここにやってくると思うと、身体の中心が熱く疼きだした。
コスプレに、かなり恥ずかしい下着を身につけたあたしに、彼はどんなイタズラをしてくるかなぁ。
初めてつけるセクシーランジェリーのせいか、もう気持ちはかなり昂ぶっている。
こんなの、いつものあたしじゃないみたい。
でも、それでいいんだよね。
しばらく待っていたら、ピンポンとインターホンが鳴って、あたしの身体はビクンと跳ねた。
玄関のドアまで来て、深呼吸。
筒井くんも仮装してきているとは思うけど、きっと簡単なものだろう。
でも、それでいいんだ。
本当の目的は、彼にあたしのコスプレ姿を見せて、いつもと違うエッチを楽しむのが目的なんだから。
そう一人納得したあたしは、生唾をゴクリと飲んでから、ドアレバーに手をかけた。
「ハッピーハロウィ……」
驚いて息を呑んだあたしは、ドアを開けた格好で固まってしまった。
だって、目の前にいたのは、あの映画『スクリーム』の殺人鬼がいたから。
ドアを開けてあのインパクトのある仮面が目の前にあれば、それこそ悲鳴をあげてしまうじゃない。
「や、やだあ筒井くん。びっくりするじゃない……」
あたしがホラーを苦手なのを知ってて、こういう仮装をしてくるとは思わなかったけど、これも彼なりのサプライズかもしれない。
真っ黒なフードを被って、真っ黒な衣装に纏った筒井くんは、ジッと仮面越しにあたしの姿を見つめているようだった。
ど、どう思ったかなこのカッコ。
なんとなく照れ臭くなって、彼の反応を伺うと、
「……いいじゃん」
とボソッと機械的な声が聞こえてきた。
「筒井くん、ボイスチェンジャーまで用意してたの?」
どこかに小型のボイスチェンジャーを仕込んでいるのか、いつもの筒井くんの声はすっかりかき消されていた。
意外と仮装に力を入れていたんだと思うと、ちょっと安心する。
さらには彼の「いいじゃん」という言葉であたしは緊張感が少しほぐれた。
となると、身体が改めて疼きだす。
今日はハロウィン。特別な夜。
潤んだ瞳で仮面をジッと見つめると、殺人鬼に扮した筒井くんは、ボイスチェンジャーの変な声で、
「Trick or Treat?」
と呟いた。