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愛獄戯館
【SM 官能小説】

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愛獄戯館-7

いつのまにか雨がやみ、窓の外は薄墨が澱んだような夜が森閑とした静寂に眠り込み、店の中
は淡い琥珀色の灯りに包まれている。光の加減であろうか、老翁の顔が魔者の能面のようにの
っぺりとしたものに見えるが、窪んだ眼孔と紅色の唇だけはどこか妖艶な翳りを深め、蠱惑的
に迫ってくる。

妻が必要としているのは、不能の老いたわたしよりきみの若いからだなのか、きみがそう考え
るなら、わたしに残されたことは、ユミコを縛りあげ、彼女にわたしのものを嫌というほどし
ゃぶらせ、苦痛で涎がでるほど鞭にさらし、陰毛を蝋燭で炙り、剃りあげ、まんこの蜜が枯れ
るほど指でまさぐり、これでもかと浣腸の液を尻の穴に注ぎ込み、悶える妻の恥辱にさらした
裸体を足で転がし、浣腸液でふくれた腹部を足先でこねあげ、陰部の翳りを足爪でこじあけ、
恥辱と苦痛の淫蕩な時間を与えることなのだが、きみという男が存在しなくてもすでにわたし
と妻はそういう関係なのだと鈍い声を吐いた。

 純粋に想像してみるがいい、いや、わたしたちにとって純粋であり他のものにとっては純粋
でもないかもしれないがと、老翁は苦笑いを頬に浮かべながら前置きし、煙草を深く吸い込む。
不能の老いたわたしにとっては妻の肉洞を穿つことは不可能だが、少なくとも深い快楽の対象
とすることはできると、老翁が言ったとき、あなたはサディストなのかと老翁に問うと、顔を
ゆっくりと縦にふり鼻でケイジロウを笑った。


 蓄音機から聞こえるバッハのコールドベルク変奏曲のピアノの音がめまぐるしく変幻しなが
ら聞こえてくる。とてもいい曲だが、不謹慎なことにわたしはこの曲にユミコという女をいつ
も思い描く。なぜだと思うかと老翁はケイジロウの顔を覗き込む。突然の理解しがたい老翁の
言葉に彼は戸惑いながら、ゆっくりと顔を横に振ると、女というものは自在に心と肉体を変幻
させるものだが、女の芯に潜む色欲の美しさはただその女だけに与えられたものであり、言わ
ば、この曲の主題である美しいアリアの短い旋律に似ていると言いながらも、短い旋律を自在
に変奏させるのは、あくまでも作曲家だが、女を変幻させるのは、女を深く理解した男にだけ
与えられる快楽なのだと感慨深げつぶやく。

女にとって、精神的、肉体的苦痛こそが快楽とはよく言ったものだが、淫売窟で男たちに嬲ら
れ、競りで売られ、見知らぬ老いぼれの、それもサディストで不能のわたしに買われ、妻とな
ったのだが、少なくともユミコは自分の欲望としてわたしを受け入れたのだが、きみにはわか
るか、苦痛は女を変え、苦痛を欲望とすることが女の密やかな、奥深い快楽であることを、そ
の快楽によって女は身も心も美しくなるものだ、きみがどうユミコを思っているがしらないが
少なくともわたしは妻をそういう女だと思っている。

ところであの日はユミコとある場所で待ち合わせをしていたのだがと老翁が言ったとき、驚い
たことに老翁がユミコさんと待ち合わせていた場所はあの「愛獄戯館」という同じ場所であり、
それもユミコさんはケイジロウに抱かれたあと、同じ夜に、同じ場所で老翁の凌辱的な仕打ち
を受けていたのだということにケイジロウはユミコさんの不可解な思惑に手足の先端が小刻み
に震えてくるのだった。


正直にいうと、きみがユミコの裸を想像するように、わたしはすでにきみという男の裸に想い
をめぐらせている。いや、変な勘違いをしないでくれ、わたしは男色家でもない、ただ、妻を
密かに慕うきみの肉体に興味を抱いただけだ。肉体と老翁に言われ、ケイジロウはある種の性
的なものを彼に感じたのだが、それは別の意味では、老翁が妻を慕うケイジロウという異物を
裸にして診察台に載せ、身体と精神の検査を行うことにも似ていることに苦笑するが、老翁は
鋭く尖った視線でケイジロウの衣服の下にある肉体を隅々まで官能的に吟味するように視線を
這わせながら、わたしはきみがユミコの《えさ》にできる男としてふさわしいのか見させても
らったと思っていると、低い声で囁くと深く吸い込んだ煙草の煙を部屋に漂う淡い光のゆらぎ
に吸い込ませた。


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