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愛獄戯館
【SM 官能小説】

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愛獄戯館-5

ユミコは買った女なのだ…と老翁は突然言い出したのだが、ケイジロウにはすぐにはその意味
が理解できないでいると、女を競りにかけ売り払う淫売窟でわたしが買いとり妻とした女だ。
不意に老翁がつぶやいた言葉にケイジロウは驚いたように耳をかたむけると、老翁は彼の表情
を卑猥になぞりながら言葉を続け、もとは資産家の家柄のユミコだったが、金に困った一族の
長老がユミコを上海の売買人に売ったと聞いている。娼婦といってもユミコがいた場所は、た
だ女が体を売る場所ではなく、見世物小屋のようなもので、極彩色の煌々とした灯りと腐乱し
た卵のような悪臭のする淫窟で、媚薬を飲まされた女たちは夜な夜な毒々しい化粧をほどこさ
れ、極悪非道なサディストの男たちの性の玩具とされ、あるいは衆人の目に晒されながら陰湿
に責め尽くされ、なかには絶息し、狂乱の果てに藻屑となって上海の海の底に沈められる女も
いたのだが、わたしはそこで見たユミコは男たちから苦痛を与えられているより、男たちの容
赦ない性的仕打ちに痴態を露わにしながらも、男たちの欲望を彼女自身が貪っているように見
えたのはけっして錯覚ではなく、ユミコはそういう女だと思ったのだ。
どうした、珈琲を入れるきみの指先が少し震えているようにみえるが…と言いながら、老翁が
ケイジロウの手元を覗き込んだとき、彼の脳裏にゆらゆらとユミコさんの顔が溶け、歪み始め
るのだった。


老翁に買われた女…思いもよらない老翁の言葉だった。老翁はさらに言葉を続け、その淫売窟
で年に一回、女たちの競りがあるのだが、そこで首輪をつけられ、後ろ手に鎖の手枷を嵌めら
れたユミコは全裸で衆人の目に晒され、脚を開かされ、あそこの穴までしゃぶられるように吟
味され、競りにかけられたのだ。

わたしは決してユミコが高い買い物だと思わなかったし、ひと目で彼女を気に入った。そう言
いながら、老翁はごくりと飲んだ珈琲で咽喉を鳴らした。ケイジロウは驚きを隠せず、足元が
微かに震えた。まさか、そんな過去がユミコさんにあるとは知る由もなかったが、どうしても
今のおだやかな彼女の顔にそんな過去を想い浮かべることは不可能だった。

なんだと、ユミコは自分の意思に反してそうされたのかだと、何をバカなことを言っているの
だ、彼女は売られ、見知らぬ男に買われることを自ら望んだ女なのだ、そんな女はきみの想像
がおよぶところではあるまい。もちろんわたしはユミコが買った女であっても愛おしく思って
いることは嘘ではないし、手元においておく女には情がうつるものだが、わたしはこう思うこ
とがある。男に快楽を与える女に、男は恋し、愛することができるのだろうか、いや、わたし
はそうは思わない。愛おしい女とは性を交えることができても、それは究極の快楽ではない、
快楽をほんとうに得られる女とのあいだに性交など必要ないものだ、少なくとも不能のわたし
が言う言葉なのかはわからないが、わたしはそう思っている、違うかね。



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