悪夢のはじまり-4
やがて院長がやってきて、耳を疑うようなことを話し始めたのです。
「お嬢さん。実はお願いがあるんだ。
今日の掻爬の手術を見学したいという人たちがいるんだ。
少しの間だが我慢してくれるね」
突然のことに声も出ませんでした。
最初何を言っているのか全くわかりませんでした。手術を見学するということは秘裂もお尻の穴もみんな見せるということではありませんか。そんなこと認めることはできません。
「いやっ……そんなのいやです」
「そういわずに、こっちも頼まれちゃってね。……私も困っているんだよ。
でも、まぁ、みんないい人達だから心配いらないよ。
だから安心しなさい」
「そんなのだめ。……ねぇ、止めて下さい。
私、帰ります。……お願いです。帰して下さい。
早くベルトを外して下さい」
私は大きな声を上げていました。
やはり、こんな病院は止めれば良かったと思ったのは正しかったのですが、後の祭りです。身体の自由が全くきかなく、どうしようもありませんでした。
「いやぁ、それはできないなぁ。……ここまできたんだら、もう……あきらめるんだな。
みんな今日を楽しみにして待っていたんだからね。
うるさく叫くと、麻酔かけないでやっちゃうよ。……うん?」
騙された気持ちで、悔しくて、みるみる涙が出てきました。
「いやっ!……絶対、いや!」
どんなにあばれようとしても、両手両足がしっかりくくりつけられているので、駄目なのです。もう、泣き叫ぶことと腰をよじることくらいしかできなかったのです。
「お願いです。堪忍して下さい。……お願いします」
「さぁ、皆さん、どうぞ……お待たせしました」
院長は、もう聞く耳を持つこともなく、廊下に向かって声をかけたのです。
院長が声をかけると、サックスブルーの手術着を着た男と女が三人ずつ入ってきました。三組の夫婦のようでした。
頭にはキャップ、口にはマスクをしていました。
そして、全員が、綺麗な蝶をかたどったアイマスクを付けています。
顔のほとんどが隠されているので、表情もほとんどわかりません。
「こんなに……たくさんの……人が……」
思わず身体がふるえました。
「ねぇ、お願いです。止めて……。
ねえ、帰して下さい」
私の必死の訴えを無視して、院長は説明を始めたのです。
「身体に触れるときには、こちらにあるシリコンの手袋は着けていただきますが、……よろしいでしょうか」
六人は手袋を着け始めました。
「おい、院長!……写真で見るよりずっと別嬪じゃないか」
「こんな可愛い顔していても、やることはやってるんだなぁ」
「見かけによらず、スケベな娘なんだねぇ……」
「素手で触れられないのがちょっと残念だが、……まぁ、しかたないか」
「でも、薄いから素手と変わらないわ。……それより爪を短くしてくればよかったわ。やぶれそう」
「それにしても、院長先生に逆らうなんて……なかなか元気のいいお嬢さんのようね」
てんでに好き勝手なことを言いながら、私を取り囲むように近づいてきたのです。
そして、手術着を顎の下まで、サッとまくり上げたのです。
「見てっ!無駄な肉が付いて無くて羨ましい身体だわ」
「はははっ……だから妊娠したんじゃないか。こんなピチピチした娘盛りを男が狙わないなんてことは考えられないさ」
「さあ、今日は久々に若返らせてもらいますかな」
妊娠して硬くなった下腹部を触ったり、乳房を揉んだり、乳汁を搾りだそうと乳首を捏ねる人もいるのです。
「それにしてもずいぶんオッパイの大きいお嬢さんね。重そうに垂れてるじゃないの」
「ほら、こうすると乳首がコリコリになってくる」
「勃起しても、……オッパイは出てこないんだな」
「このおなかじゃ、まだ無理よ」
私は、たくれた服が邪魔で、何をされているのかまったく見えないのです。
声しか聞こえません。
これから何が起ころうとしているのかわからなく、不安でいっぱいでした。
ただ、この段階で、まだ股間のガーゼや秘裂に手を伸ばす人がいないかったのだけが救われます。
「ほんとに最近の若い人は、子供だけはすぐできるのよね。どうすれば赤ちゃんができるか知っているのでしょうにね」
「まあ、好きな男の人に見つめられると……それだけで、目は潤んでくるし、あそこはジュンと濡れてくる年頃ですからね。……無理もないことかしら」
「ははは、奥さんも若い頃はそうだったんですか」
「ええ、もちろん。……若い娘はみんなそうですわ」
六人は互いに面識があったようです。かなり立ち入ったジョークが通じる仲のようだったのです。
六人は、乳房以外にもあちこち触りはじめました。
ついに、股間のガーゼをソッとめくって覗き込む人も出てきたのです。
「あんがい、毛深いのね。毛深い人って淫乱って聞いたことがあるけれど、……ふふ、ほんとなのね」
「みてよ、あなた。……ビラビラが真っ黒じゃない」
「ほんとだ、おまえの時より、黒ずみがすごい……」
「やめてよ、恥ずかしい」
雑談が止みました。院長が皆に話を始めたのでした。
私はベソをかいていたので、初めのほうは何を言っていたのかほとんど耳に入りませんでした。