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「柔らかな鎖」
【SM 官能小説】

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「柔らかな鎖」-7

某月某日
 昨日から今日にかけてはちょっと特別なことがあった。といっても考えたら、由布さんと約束をしてからずっと、特別なことの連続のような気もするのだけれど。

 昨日、サークルの飲み会があった。私が少し遅れて会場の居酒屋に着くと、部長の安野さんに
「おーい、小野寺、こっちこっち」
と呼ばれた。私が由布さんはどこにいるのかと思って見回すと、部長の隣に空席があって、その隣が由布さんの席だった。由布さんは静かな声で、
「響子」
と呼んだ。騒がしい店内でも由布さんの声をはっきりと聞き分けられたことが嬉しくて、私はいそいそと由布さんの隣の席に腰を降ろした。
 そしたら、同期の中村さんや小池さんが、
「響子、ずるぅい、部長の隣だなんて」
と文句を言い始めた。彼女たちは部長に憧れていて、日頃から部長が私を贔屓しているとか影でぐちぐち言っているらしい。正直そういうのには辟易しているから部長の隣になんか座りたくないんだけれど、由布さんの隣に座ると必然的に部長の隣になってしまうのだ。
 安野部長は由布さんとは正反対の、どちらかというと無神経でガサツなタイプで(中村さんや小池さんに言わせると『男らしくてワイルド』なんだそうだが)、よくこういう正反対のタイプは親友になったりするものだけれど、この二人は実際あまり仲がよくないらしい。
 サ−クルのみんなには、由布さんとつきあっていることは教えてなかった。隠すつもりもなかったし、しょっちゅう一緒に帰っていたのだから誰か気がついてもおかしくなかったのに、みんな「帰りの方向が一緒だから」以上には全然考えてもいなかったみたい。だから、由布さんが私のことを「小野寺くん」ではなく「響子」と呼び、私が由布さんのことを「柿崎先輩」ではなく「由布さん」と呼んでいるのを聞いて、不思議そうな顔をしていた。
 安野部長が突然
「おい、小野寺って、柿崎とつきあってるのか?」
と言い出した時にはちょっとした騒ぎになったけど、由布さんが平然と
「そうだよ。響子は僕のものだから、手を出したら承知しないよ」
と例のもの静かな口調で言ったものだから、みんなは一瞬で静まってしまった。由布さんの言葉には、もの静かだけど有無を言わせない響きがある。
 安野部長はなにかムッとしたような表情をしていた。多分、部長なのに会員同士が恋愛関係にあることに気がつかなかったのが悔しいのだろう。


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