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「柔らかな鎖」
【SM 官能小説】

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「柔らかな鎖」-6

某月某日
 学校の掲示板を見ていたら、きれいな女の人に声をかけられた。誰だろう、と思ってその人をよく見たら、雪乃さんだった。
「響子ちゃん、だったよね、柿崎くんの。私は、寺尾雪乃。鳴沢和明さんの……です」
そういえば、昨日はみんな下の名前で呼んでいたので、名字がわからなかったんだった。鳴沢和明さんって、野球部のスター選手でキャッチャーの? そういえばどこかで見た覚えのある人だった。雪乃さんは、昨日見た清楚でおとなしそうな感じとは違って、一目見て快活で聡明だとわかるような人だった。
「小野寺響子です」
「柿崎くん、この前からとっても嬉しそうだったのよ『宝物をみつけた』って」
「宝物……ですか?」
「そう。昨日の様子を見てても、本当に可愛くて仕方ないって感じだったし」
 由布さんが私のことをそんな風に言っていたなんて意外だった。
「昨日はショックだったでしょ? でも、私と柿崎くんとの間になんの感情もないから……あ、正確には『同期の友人として』以外になにもないから、安心して」
「安心して、って……雪乃さんは平気なんですか?」
 あんなことをして、とはさすがに言えなかった。
「平気じゃないわよ。あのね。なぜあれが罰になるのか、わかる?」
 ちょっと考えてみた。なんとなくわかるような、わからないような感じ。
「よくわからないです」
「平気じゃないからよ。和明さんは平気みたいだけど、私は平気じゃない。だからこそ、罰になるの」
 平気じゃないから、罰になる……そういえば由布さんは昨日、「今はこれで罰になってる」って言っていた。私が悲しい思いをするから、罰になる……そういうことなの?
「なんとなくよくわからないって顔ね。うーん。私じゃこれ以上説明できないから、柿崎くんに聞いてみるといいわよ」
 雪乃さんはそう言ってから、耳もとに小声で
「セッションじゃない時にね」
と付け足した。
 それから、二人でカフェに行って軽いランチを食べた。私は午後の授業があるのでそこで雪乃さんと別れたのだけれど、雪乃さんはこれから和明さんと二人で出かけるのだと嬉しそうにしていた。

 家に帰って本を読んでいたら、由布さんから電話があった。早速、昼間雪乃さんと話したことについて聞いてみる。
「だいたいは響子の考えてるとおりだよ。響子が悲しく感じるっていうことが、響子に与えられる罰なんだ」
「じゃあ、昨日の雪乃さんは……?」
「ああ、雪乃はね、最愛の和明の見ている前で僕に何度も気をやらされるのが辛いんだよ。だから罰になる」
「あの、もしかしたら私も由布さんの前で……?」
「そうだね、響子にそんな罰を与えなければならないことが起きないほうが僕は嬉しいけど。和明とちがって僕は、響子のそんな姿を平気で見ていられるかどうかわからないから」
「なら、そんな罰はしなければ……」
「響子は、僕が悲しい思いをしたとして、平気?」
「平気なわけないです。由布さんが悲しいのは、私も辛いです」
「だったら、わかるよね? もし僕が響子のそんな姿を見たら、悲しくなる。僕が悲しんでると思ったら響子は辛いだろう? だから響子に対して、強い罰になるんだよ」
「……」
「僕は主人だからね。僕が命令して響子が従うっていうのは、別に僕が楽をするためにそうしているわけじゃないんだよ。響子が僕にちゃんと従うように、主人には主人としての、負うべきものがあるってこと」
 由布さんの言ってることは難しすぎてよくわからなかったんだけど、
「響子は、僕がきのう、雪乃としていて楽しんだと思ってる?」
って言われて、なんとなくわかったような気がした。私に罰を与え悲しませることで、由布さんも辛い思いをしているんだなって。だからこそ、私は罰を受けないように命令に従わなければならないんだってことがわかった。
 うーん、すごい(感嘆)。そうやって従順になっていくんだ……。
 ちなみに由布さんの用事は、昨日私が泣きすぎたんで、心配だったそうだ。


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