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「柔らかな鎖」
【SM 官能小説】

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「柔らかな鎖」-3

由布さんの言う『僕が命令して、響子が従う』というのはこういうことだったんだ……私は軽いショックを受けていた。その様子を察したのか、由布さんはいつもよりいっそう優しい声で、
「響子、辛いのなら辞めるよ、残念だけど」
と言った。辞める……これはセッションを中止するという意味ではなくて、由布さんと私との別離を意味するのだ。由布さんとお別れしなければならない……そんなことに私はとても耐えられそうにない。
 私は跪いて、由布さんの脚の間を見つめた。大きくするってつまり……ってことよね。そんなこと今までしたことがなかったから、おっかなびっくり手を伸ばして触れてみる。そしたら由布さんは
「ファスナーを降ろして、直に触れて」
と言った。言われたとおりにファスナーを降ろし、下着(由布さんの下着はブル−のボクサーパンツだった)をずらして、その中にある由布さんの……ペニスにそっと触れてみる。熱いけれど、まだ柔らかい。私が撫でたりさすったりしていると、由布さんは
「響子の口で、大きくして」
と言った。ためらっちゃいけないんだ。由布さんが望んでいることなんだから……そう自分に言い聞かせて、由布さんのものを口に含む。由布さんは私の髪をそっと撫でてくれた。心の中に、愛おしさが湧いてきた。由布さんのものがだんだんに大きく強く脈うち、堅くなってきた。
 由布さんは突然、
「響子、そこまでにして。次は響子の準備をして」
と言った。私の準備? 意味のわからないことだらけだ。
「僕を受け入れられる?ちゃんと準備しておかないと痛い思いをさせてしまうよ」
 つまり、ぶっちゃけて言えば濡れて無いからちゃんと濡らしておけ、って意味なんだと気がつくまで随分かかってしまった。それまでの私の経験だと、男の人が前戯とかいっていろいろ愛撫してくれるものだったから、なんのことだかさっぱりわからなかったのだ。
「そうか……響子は自分でしたことはないんだね。でもやり方はわかるよね」
 由布さんはちょっと残念そうに、でもイライラした様子はなく言った。
「はい」
と私がうなずくと、由布さんは
「じゃあ、準備して。響子に痛い思いをさせたくないからね」
と言った。私は恥ずかしくて顔から火が出そうだったけれど、由布さんの言うとおりに、自分の指を使って愛撫した。由布さんが見てると思うと最初は緊張してしまった。けれど、私の準備ができるのを由布さんが待っているのだ。私は一生懸命になっていた。だんだん、体がほてってきて、指がぬちゃぬちゃと湿っぽい音をたてはじめた。
「そろそろいいかな。響子、向こうをむいて四つん這いになって」
 由布さんが声をかけてきた。四つん這い? バックってこと? しかも由布さんは服を着たままなのだ。初めて結ばれるのにちょっと寂しい感じがしたけど、私はいわれるままに四つん這いになった。由布さんの方からは、私の恥ずかしいところが丸見えになっているだろう。
「まだ響子は慣れないから動くのは難しいだろうね」
 由布さんはそう言うと、一気に私の中に入ってきた。
……その後のことははっきりとは覚えていないのだけど、私は多分、あまり気持ち良くならなかったと思う。思う、というのは、由布さんのものが入ってきた瞬間から、頭がぼーっとして自分が自分じゃないような気分だったのだ。実のところ、私はまだ「イク」というのがどういうものなのか知らないから、自分の状態をよく理解できていないのかもしれない。
由布さんは終わったあと、
「響子、後始末をしてくれるかい? カウンタ−に温蔵庫があるから、中からおしぼりを持ってきて」
と言ったのだけれど、私は腰が抜けたみたいに脚がもつれて途中で3回くらいよろけてしまった。おしぼりをもってきて、由布さんのものをきれいに拭ってズボンの中に納めたら、由布さんが微笑んで
「よくできたね、響子。じゃあセッションは終了だよ」
と言って、抱き締めてくれた。

 それから服を着て、由布さんに家まで送ってもらったのだけれど、その途中、私が
「なんて呼んだらいいんですか?由布さんのこと」
って聞いたら、
「普段はいままで通り『由布さん』でいいよ。セッション中は『〜さま』の方がらしいかな。気分も区切りがつくし。『御主人さま』っていうのはあまり好きじゃないんだ。でも、響子がそう呼びたいんならそれでもいいけど」
っていつも通りの静かな口調で答えてくれた。
 家の前で別れるとき、由布さんは今日初めて私にキスしてくれた。


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