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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-7

『芝居??』
「君はいつでも芝居をしている。剥き出しの自分は、独りの時にしかない。」
私は笑った。
『誰だってそうでしょ?』
「昨日もその前に会った時も、君は俺が美女と呼んだら急に不機嫌な顔をしたな。君は自分の容貌を嫌っているんじゃないか??」
真剣な顔をして蓮は言った。
『馬鹿言わないで。』
「馬鹿じゃない。世の中に誤解があるのさ。」
『どんな?』
「綺麗な女は人生で様々な特をすると思われている。同じ能力なら、必ず綺麗な女の方が高い評価をされると。だが実際は違う。優れた結果をだしても、綺麗な女は、認められた理由を周囲に[綺麗だったから]と言われてしまう。[綺麗]はいつだってついて回る。仕事が出来ることと[綺麗]は別だとはなかなか思っちゃもらえない。頭や体を使わず、楽をしたい女は[綺麗]を上手く使う。だが自分を正当に評価してもらいたい女にとっちゃ[綺麗]はむしろハンデになる。」
『そんな事、考えた事も無いわ。』
「嘘だね。認めろ。」
蓮はきっぱりとした口調だった。
『認めさせると高くつくわよ。』
「君には2つの貸しがある。」
私は演技ではなく、本気で微笑んだ。
『貸しの代わりに認めろと??』
「今、君にほんの少しだけ素の君が現れたような気がするよ。剥き出しの君が。」
蓮は考えを悟らせない表情で私を見た。
私は煙草に火をつける。
『仕事の話をしましょう。私に何をさせたいの??』
蓮も同じ様に煙草に火をつける。
「運び屋さ。」
『荷物は??』
一段と真剣な眼差しで私を見つめた蓮は少し躊躇ったように言った。
「聞けばもう後戻りは出来ない。覚悟はあるか??」
覚悟はとうに決まっていた。私に安息が訪れるのは蓮の組織が跡形もなくなった時だけだろう。私は無言で頷いた。
「アゲハというドラッグディーラーがいる。レイラ、君に頼みたい事はそのアゲハへドラッグを卸す事だ。」
アゲハ…。

私はその名を知っていた。数年前、新宿や渋谷といった町で名をはぜたドラッグの売人、筴〔キョウ〕と言う男が連れていた女の名だ。
筴は新宿・渋谷双方の地元暴力団と契約し、若者の間ではカリスマ的な売人として知られていた。しかし、筴は契約していた地元暴力団と何かの事情で仲違いを起こし消された。
理由は定かではない。私達麻取の間では筴が地元暴力団とは手を切り、新たな麻薬組織から薬を扱おうとした為、どちらかの暴力団、から制裁を受けたという見解に落ち着き、事件の記憶は薄れていった。

その筴の女が蓮と取引を持っている…。
私はその事実を知り愕然とした。筴が新たに扱おうとしていた麻薬の組織とアゲハは契約を交したのではないか。その麻薬組織が蓮の組織。
私が思っていたよりも蓮の組織は巨大な存在かも知れない。
「怖じ気付いたか??」
黙ってしまったわたしに蓮が訊いた。
『いいえ。』
「ならいい、アゲハというのはまだ18かそこらのガキだ。だがガキの割には筋がいい。目的の為には手段を選ばないような冷酷さがある。自分の体を使おうが、相手を死に到らしめようが、自分の目的を必ず果たす。俺達は東京での流通はアゲハ1人に絞る事にしている。」
『珍しいわね。なるべく卸し元の情報が漏れないように、捌く時は複数のどうでもいい売人を使うのが麻薬密売の鉄則じゃないの?』
私は出来るだけ興味の無いような振りをして尋ねた。
「普通はな。俺の会社のお偉いさん方の考えている事はよくわからない。」
蓮は少し呆れた様子で言った。


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