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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-38

「結論から言おう。社長は死亡、フール、アゲハは逃亡。身柄を確保した早坂と名乗る仕入れ部門の部長は密造地の所在は知らされていなかったようだ。従って、密造地の特定には至っていない。」
『申し訳ありません。』
私は唇を噛み締めた。
「いや、君のせいではない。強襲部隊が重役会の行われていた建物から地下道が延びている事に気付いたのは強襲の翌日だったのだ。」
永井は静かに話した。
「社長の部屋で遺体が見付かった男達は友常という専務とその部下だとわかった。これも早坂の供述によるものだ。」
『その友常という男や社長をを殺したのはフールとアゲハです。』
あの時の光景が瞼をよぎる。
組織の壊滅は麻取とINCの強襲によってではなく、フールやアゲハ達の裏切りによってもたらされたのだ。
私は社長の部屋に入ってからの出来事を全て話した。
「なるほど、INCのエージェントも同じ見解だった。フールの方はINCのエージェントによって腹部に銃弾を受け、至急治療が必要な状態だったと思われる。逃走途中、医療機関に立ち寄った可能性を考えて、現在付近の医療機関を調査させている。」
『可能性は限りなく低いですね。フールの治療にあたった者が名乗り出るとは思えません。銃創の治療を行った場合、届出をしなかった現時点で違法行為でしょう。』
永井は目を伏せた。
「君の言う通り、可能性は限りなく低い。だが明るい知らせもある。INCによって建物内部より組織の詳細な納品記録が回収されたのだ。これで海外の納先は大体把握できた。」
『そうですか、では輸出されたダークネスの追跡にはINCがあたるのですね。』
私は言った。
これで私のダークネスに携わる仕事は終わりだろう。日本の麻取が摘発を行えるのは国内だけだ。海外へと出てしまえば、そこからはINCなどの国際麻薬捜査機関の仕事だろう。
「無論だ。INCにはこれからも尽力してもらわねばならん。」
永井は私に目を戻すと言った。
『そういえば、お礼を言っていませんでしたね。勝手な事をした私を助けて頂き、ありがとうございました。永井さんには本当に迷惑をかけてしまいましたね。』
私は、私を見捨てずに協力してくれた永井をはじめとする麻取という組織に心から感謝していた。
「いや、今回の摘発が行えたのは君がいたからこそだ。礼を言わなければならないのはわたしたちの方だよ。INCも君には本当に感謝している。同時に、君の様な勇敢な女性が日本の麻取にいる事に驚きもしていたがね。」
『とんでもありません。』
私は最も気になっていた質問を永井に向けるべきか、迷っていた。
その質問に永井が答えた時、答えによっては私の心が壊れてしまいそうな気がしていた。
今私の心をにある強い喪失感は更に力を持ち、私の心を支配するだろう。
だか、聞かない訳にはいかなかった。
『永井さん、蓮という男はどうなりましたか?』
一瞬、永井の表情が曇った事によって、私は最も恐れている答えを覚悟した。
「その質問に答えるのは私ではない。すまないが、その男についてはINCの方に尋ねてくれ。」
永井は私から目を反らして答えた。
どういう意味なのか。蓮の身柄を確保、もしくは殺害したのがINCなのだろうか。
「わたしからの話では最後になるが、一昨日、目黒署の橘君がここに来た。」
栄祐の事だった。きっと私にはとっくに愛想をつかしている事だろう。
「君がこの場所に運び込まれてすぐに彼はやってきたよ。無事でいてくれてよかった、そう言っていた。」
『そうですか。』
私は無表情でそう言った。
そして永井は私の体調を気遣うと、部屋を後にした。
私はINCのエージェントとの面会に対して、さして興味を持たなかった。あの戦火の中、蓮が生きているとは考えにくい。
ただ私に絶望をもたらす言葉を告げるのが、永井からINCのエージェントに代わったと言うだけだ。


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