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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-36

アゲハが組織の最大の秘密、ダークネスの密造地を知りながら生きていられた理由がやっとわかった。事実上組織の実権を握っていた、フールという後ろ盾があればアゲハの命が組織によって脅かされる心配はない。
「レイラさん、早くここを出よう。」
アゲハが言った。
「組織の人間は誰も知らないが、建物の地下に緊急脱出用の通路がある。マンホールとつながっていて、外に出れるんだ。」
フールがアゲハの言葉に付け足すように言った。
『何故私にそんな事を話すの?』
「組織の命運は今日完全に尽きた。いつかこの組織はトラックジャック等の外部からの攻撃によって滅びるとは思っていたが、まさか警察がここまでつきとめるとは思えなかった。だが、新たな流通組織を作るには絶好のチャンスだ。俺達はここを爆破して脱出する。いっしょに来てもらいましょうか。新しい組織作りにあなたやアゲハは欠かせない。」
フールは手を差し出した。
『いけないわ。』
フールは顔を曇らせた。
「なぜ………やっぱり蓮を裏切れない?」
私はアサルトライフルをかまえた。
『蓮?あたしはずっと蓮を裏切っていたのよ。武器を捨てなさい。あたしは麻取よ。』
フールは笑いだした。
「何を言っているんだ、レイラさん。俺は…。」
その言葉が止まった。笑みが消え、フールは私を暗い瞳で見つめた。
「本当なのか?」
『本当よ。私の所属は関東信越地区厚生局麻薬取締部。』
フールとアゲハの顔から表情が消えた。
「何でよ…。レイラさんが麻取…?レイラさんのならあたしの気持ちわかってくれると思ったのに!あたしと一緒で、女だからこそ可能な事が世の中にはあるってレイラさんも知ってるじゃない!!」
アゲハが言った。
私はアゲハやフールに裏切りを責めたてられるこの瞬間でさえ、その相手が蓮でない事にほっとしていた。
『フール、アゲハ。司法取引を受け入れなさい。密売組織と密造地の全容を話せば、あなた達は刑事訴追を免れられるかめしれない。さもなければ―。』
不意に建物が揺れた。
「さもなければ?」
フールは恐ろしいほど冷たい目をしていた。
『あなた達を逮捕するわ。』
「フザケやかって…!」
フールは吐きすてた。次の瞬間、その右手に9mmオートが現れ、それが火を噴いた。私はよろめいた。左肩を弾丸がえぐっていた。
その痛みに、私は今にも気を失いそうだった。
最後の気力を振り絞り、社長のベッドの上に乗せたアサルトライフルの引き金を絞った。しかしアサルトライフルから銃弾が飛ぶ事は無かった。カートリッジが外れていた。
それを見たフールは再び9mmを構えた。

―もうダメだ…。
私は力を失い、その場へ倒れ込んだ。

消えかかる意識の中、誰かが発砲する銃声が聞こえた気がする。肩の痛みの産み出した幻で無ければ、その銃弾はフールの腹部に命中した。
その直後、これまでとは比べ物にならない激しい衝撃が建物を揺らし、建物の崩壊が始まった。




何者かが激しく私の体を揺さぶっていた。全身が痛む。何かを叫んでいる声が聞こえたが、意味はわからない。
突然激しい光が目の奥にさしこみ、私は悲鳴をあげた。

―痛い、お願いやめて。私を放っておいて。

その時、1つの言葉が浮かび上がった。
言わなければ…。この言葉を。
唇がうまく動かせない。言う相手の姿も見えない。
舌がもつれた。それでもささやくような小声でかろうじて言った。
『……ヴァイオレット………。』


声が聞こえた。
「玲良!!」
心地好い声だった…。
痛みを起こしていた光が消え、体がもちあげられるのを私は感じた。


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