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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-35

階段まで走り抜ける事は可能だろうか。その時、凄まじい地響きが伝わった。専務か部長の乗ってきたとおぼしい車が爆発、炎上したのだった。
私は唇を噛んだ。蓮がこの戦闘に巻き込まれていない事を願った。
私が階段へと走り出した瞬間、上空から銃弾が襲ってきた。アサルトライフルを手にした私を敵と判断した衛兵が歩哨小屋から私を狙ったのだ。
私は転がってポルシェの陰に隠れると、アサルトライフルで歩哨小屋を狙った。100発の銃弾がわずか3秒で小屋の頂上を蜂の巣にした。銃撃がやみ、私は新たなマガジンを押し込んで身を起こした。
次の瞬間、ポルシェのボンネットに衛兵の撃ったライフルの銃弾がつき刺さり、へこみ、たわんで穴が一列に撃たれていく。そしてついにガソリンタンクに命中して炎上した。
私はポルシェの陰から転げでた。そして叫びながら走った。
『蓮!蓮!』
付近に衛兵の姿が無いことを確かめると、私は階段を一気にかけ降りた。しかし、蓮の姿はそこにはなかった。
落胆の気持を強く感じたが、私はくるりと踵を返した。蓮はここにはいない。蓮がどこにいるのがはわからなかったが、蓮がいなければ残る任務は社長の身柄確保しかなかった。
任務を離脱し、自分の安全を確保すべき時なのはわかっていた。だが、蓮に会えないとわかった今、生き残りたいという気持も失われつつあった。
建物のすぐ近くまでくると、私は衛兵の迎撃を予想していたが、建物の周辺にはヘリによる攻撃で、戦闘力のある衛兵は殆んど残っていなかった。
炎上するポルシェを尻目に私は建物の中へと入った。
建物だけは未だ破壊されておらず、ヘリによる銃撃の跡も最小限だった。強襲部隊の作戦指揮官は、病人である社長を攻撃によって死亡させるのを躊躇ったようだった。社長が死ねば、重要な情報源を失う事になる。
私は人気のない廊下を進んだ。
強襲部隊が全てを制圧するのも時間の問題となった今、社長の護衛に建物に残っているであろう専務達とわざわざ銃火を交える必要はなかった。だが私は行かずにはいられなかった。もしかすると、建物のどこかに蓮が潜んでいるかも知れないと思ったからだ。
先程まで重役会の開かれていた部屋とを通り、アゲハのいた部屋へと足を踏み入れると私は思わず足を止めた。
専務と専務の連れていた衛兵達の死体が折り重なるように倒れている。
何があったのだ……。ヘリによる機銃掃射のせいだとは思えなかった。衛兵達は、広間に待ち受けていた何者かによってなぎ倒されたのだ。
私はアサルトライフルを握り直し、社長の部屋へと進んだ。
専務らを殺戮した犯人が潜んでいるとすれば、屋敷の内部以外考えられない。
社長の部屋は先程と変わらず、厚い緞帳がおりていた。
『社長…。』
私はベッドのある辺りに向かって呼び掛けた。返事はない。
そのまま足を進め、緞帳を退けてベッドのすぐ横に立つ。
『社長…?』
もう1度呼び掛け、私は社長の肩の辺りに手を伸ばした。
反応はない。私は社長の頬に触れた。驚きに手が止まった。社長の頬は血でまみれ、額にはくっきりと銃で撃ち抜かれた跡があったのだ。
「何処にいってたんだい?」
突然かかった声に私は息が止まる思いだった。
後ろを振り替えると厚い緞帳が上がり、部屋の中央にフールがたたずんでいた。その後方にはアゲハと、他に4人の男がいる。衛兵達とは違う、迷彩服に身を包んだ白人の男たちだった。
『社長や専務達を殺したのはあなたね?』
私はフールを見据えて尋ねた。
「そうさ。もうこいつらは必要ない。」
『あなた達の目的はこの組織をのっとる事だったの?』
フールは落ち着いた表情で私を見返した。
「正しくは、この組織を潰し、アゲハや彼等と共に全く新しい組織を作り上げる事だけどね。」
フールは後ろにたつ4人の男達を見た。
『その為に社長を殺したのね…。』
これで密造地の情報を知る可能性があるのはフールとアゲハだけだ。


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