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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-34

<……トラックジャックを常務が行っていたという証拠はあるのかね?>
50代の後半で地味な色のジャケットを着た、神経質そうな茶色い顔をした男が言った。
「あいつが専務、その隣にいるのが仕入れ部門を担当している部長。蓮とは同格に当たるわ。」
アゲハは背が高く、横幅の方もたっぷりあるレスラーのような体つきをした男を指差した。その男は腕を組み、うつむいて話に耳を傾けている。
《だが常務が我が組織に損害を与え、重要な情報を隠匿していたのは事実ですね。》
フールが言った。
重役会に参加していたのはその3人だけであった。蓮の姿はない。
「会社の幹部は社長と常務と蓮の他にこの3人。」
『蓮はどうしたの?』
アゲハは私の問いに首を横に振った。
「あたし達は何もしてない。車は止まっているのに姿がないんだ。」
もしかしたら蓮は今も私を待っているのであろうか。私が行く事の出来なかった階段下の庭で…。
「今日来なかったことで、蓮は出世を逃したよ。今までの常務の仕事は専務が兼任するってさっき決まった。」
私が無言でいるとアゲハは更に続けた。
「まぁ、どうでもいいんだけどね。どうせこいつらはもう用無しだから。」
『あなたの目的は何なの……?』
「新しいダークネス密売組織を作る事。」
『今、何て?』
アゲハは躊躇う様子もなく言った。新しいダークネスの密売組織を作ると。
その時、かすかな振動が足元を通して伝わってきた。銃声が聞こえてくる。
<何事だ?!>
隣の部屋の専務が言った。
麻取とINCの強襲が始まったのだろう。私は血の気が退くのを感じた。まだ蓮に司法取引の話を持ちかけていない。
<何が起きた!?>
スピーカーを通してフールの声が響いた。
<フール様!報告致します。>
重役会の開かれていた部屋の扉がノックされ、警備員が姿を現した。
<警察権力による包囲、攻撃を只今確認しました!!>
<何だと?!>
フール達が口々に怒鳴る。アゲハは目を大きく見開いた。
<現在応戦中ですが、敵は装甲車も準備しており、ヘリによる空中からの攻撃もうけております。>
警備員のその言葉が終わらぬうちに、超低空飛行の爆音が全員の頭上で轟いた。
目の前でバタンという音がした。アゲハが部屋を区切っていた扉を開き、フールの元へと走りよった。私もアゲハの後を追った。
「フール!!何が起きてるの?」
そう尋ねたアゲハにフールは眉をひそめて言った。
「わからない。とにかく応戦しなければならないだろう。」
「その通りだ。戦闘の指揮は私がとろう!」そう言った専務が仕入れ担当の部長と警備員を連れて部屋を出て行った。
部屋を出ていく3人を見送ったフールは私を真っ直ぐ見つめた。
「レイラさん、詳しい話は後程。」
そう言ってフールもアゲハと共に部屋を出て行った。
部屋に残っているのは私1人だ。表の騒ぎとは裏腹に、建物の中は不気味なほど静まりかえっている。私は迷っていた。蓮との待ち合わせ場所に向かうべきか。
一瞬考え、私は決断を下した。まず蓮と会おう。
建物の外に出た時、衛兵の小隊をひき連れた専務と出会った。社長の身を護衛するために戻ってきたようだ。
「フールの連れてきた女か、どこへ行く?」
専務は険しい表情で訊いた。
『車に武器がある。とりに行くの。』
私は答え、駐車場へと走った。激しい小火器の銃声と、腹に響く砲声が混じっている。歩哨小屋からは機関銃が発射され、きらきらと輝く薬筴が宙を舞っている。
私はその下をくぐり、ポルシェにたどり着くと、トランクからアサルトライフルを取り出した。予備マガジンをポケットに詰め、振り返った。
蓮がいるとすれば階段下の庭だ。階段は建物に向かって右側に見えた。


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