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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-32

『わかったわ、じゃぁまた神奈川で会いましょ。』
私はそうアゲハに言った。するとアゲハはその事について否定しなかった。
「じゃぁね!」
そう言って電話を切った。
やはり、アゲハも重役会へと行くのだろう。
私は昨日買っておいたスーツと青のスカーフを身に付けた。そして内ポケットには組織に潜入した時から預けられているCzを入れた。
ポルシェにはアサルトライフルも積んでおこう。対トラックジャッカー用に使った物とは別の、もっと破壊力の高い物を。
私はこれまでの納品の際に、築地の倉庫からいくつかの銃火器をくすねていた。
CAADC、中央アジア武器開発公社製のそれは超高速ケースレス5mm弾を、毎分2000発発射するという。ロングマガジンには500発の弾が入るが、それでもフルオートで3秒しかもたない。
何が起こるかわからない今日のような日にはうってつけの破壊力だ。
そして私はポルシェのキーを握り締め、組織に潜入してから塒にしていた青山のホテルをチェックアウトした。

このポルシェに乗る事も今日で最後だろう。自分の人生にとって、今日という日は忘れられない日となる。あるいは最悪の場合、今日より先の人生を失う。
私は上司永井との打ち合わせ通りに携帯の電源を15分間切り、そして再び電源を入れた。永井をはじめとする麻取やINCは強襲の準備に取り掛かる事だろう。そして私のGPS位置が定まった後、暫くすれば攻撃が開始されるであろう。
私は蓮から預かっていた地図の通りに神奈川へと向かった。首都高に乗り、横浜方面へと向かう下り線に合流する。
重役会の場所は狭く急な坂を登った頂きにあった。坂を登リ始めてから人家の様なものはなかった。カーブを描く道と鬱蒼とした雑木林だけが続いている。
木々が途切れた合間からは三浦半島と東京湾を見渡す事が出来た。
坂を登るうちにゲートが見えた。警備員の制服を着けた男が2人、金網のゲートの向こうに立っている。
【この先私有地・立入禁止】そう記されたプレートが金網に掲げられていた。
警備員は私がフールの呼んだ客であることを無線で確認すると、ゲートを開いた。
『建物まではあとどの位?』
私は警備員に尋ねた。
「山の頂上まで、もう間もなくです。」
『この山全てが会社の持ち物って訳ね。』
私は再び坂を登リ始めた。一段と坂が急になったが足の強いポルシェには問題がなかった。
そしてゲートから300m程登ると、森に囲まれた建物が見えた。
建物の前には、手前にあったゲートとは比べものにならないほど頑丈な鉄扉が横たわり、さらにその鉄扉を越える高さの歩哨小屋がある。火器を手にした戦闘服の門衛が小屋の窓から近付く車を見下ろしていた。
私は門衛の指示で鉄扉の手前にポルシェを止めた。他には国産の高級セダンが何台か停まっていたが、蓮のコルベットはなかった。
約束の1時半にはまだ20分程ある。蓮が着く前に待ち合わせ場所に降りてしまおう。私はそう考え、鉄扉をくぐった。
鉄扉の向こう側には広大な庭が広がっていた。
私は蓮の言っていた下の庭へと降りる階段を探した。しかし、私はその階段を見つける事は出来なかった。庭が広すぎたせいではない。何者かが、意図的に私の意識を奪ったからである。



意識を取り戻した時、私は白いソファの上にいた。

「目覚めたか、女。」
私のいた場所はえらく広大な部屋だった。正面に社内から見た景色が広がっていた。
その部屋は2段に区切られており、吹き込む風にそよぐレースのカーテンによって区切られた高い段にはベッドが置かれている。
声はそのベッドから聞こえた。カーテンの向こう側はベッドの両脇に様々な医療機器が並んでいた。
ソファからベッドまでは15m程の距離があった。


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