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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-30

レストランの料理はなかなかのものであった。食事を済ませた私達は部屋へと戻り、ルームサービスで各々に好きなアルコールを頼んだ。
「本題に入ろうか。」
そう言った蓮はバーボンのグラスを手にベッドへと腰を下ろした。私は煙草をふかしながらソファに座っていた。テーブルにはカシスのカクテル。
「明日午後、重役会が開かれる事になった。」
『それは私も行けるの?』
「あぁ、君にはフールからのお呼びがかかってる。」
私は息をのんだ。やはりフールからの食事の誘いには何かしらの意味があったようだ。
『あなたも呼ばれてるんでしょう?』
「あぁ、もちろんだ。だが、君と一緒に行く訳にはいかないだろう。」
蓮は溜め息をついた。そして私が何故?と訊く前に言った。
「俺と君がデキてる事が面白くない奴がいるのさ。」
『フール?』
私がそう言うと蓮は笑いだし、肯定するように頷いた。
「だがレイラ、気を付けろ。あいつはただ君に惚れてるって訳じゃないだろう。何か裏があると俺は思っている。」
『わかったわ。』
真剣な顔をして注意を促した蓮に、私も真剣に返事をした。
「重役会の場所はここに書いておいた。明日の2時までにはここに行ってくれ。」
蓮が私に渡した物は重役会の開かれる場所が詳しく書かれた地図だった。大まかな地図の他にもう1枚、重役会の開かれる建物や庭、駐車場などの位置関係が書かれた地図があった。
その場所は横浜市南部の高台にあるようだった。きっと綺麗な海が見渡せる様な場所だろう。
『ねぇ、向こうに着いてからあなたと会う事は出来ない?』
私は蓮に尋ねた。もし、蓮に司法取引をもちかけるのであれば強襲の直前しかないであろう。
「フールの目を盗んでか??」
『ええ。』
「なら重役会が始まる前にしよう。建物の手前に庭があるんだが、その庭の隅に下り階段がある。その階段を降りると滅多に人のこない小さな庭があるんだ、そこで会おう。」
蓮は手振りを交えながらそう言った。
『わかった。時間はどうする?』
「そうだな…、1時半頃になら行けそうだ。」
『じゃぁその時間に。』
「あぁ。」
そう言った蓮は手にしていたグラスのバーボンを一気に飲み干した。
「レイラ、こっちにこないか?」
私は無言のままベッドに座る蓮の横に座った。すると蓮は優しくくちづけをした。
「レイラ、君は素晴らしい。君と出会えた事を俺は本当に感謝する。君の頭、君の体、全てが俺には愛おしいよ。」
私は目をそらした。じきにあなたはそう思わなくなる。それどころか、この世で最も私を憎む人間になる。
「玲良。」
『えっ?』
何か耳に違和感が残った。
「やはり変か?」
私を呼ぶ蓮の声が、普段のイントネーションとは微妙に違っていた。
『もしかして玲良って日本の発音で呼んだの?』
「あぁ。玲良、重役会が済んだら旅行に行こう。言ったろう?小島のリゾート。今日、予約をしたんだ。」
蓮の優しさに胸が痛んだ。
『行けたら、ね。』
「いけるさ、俺達は最高のチームだ。」
『………』
私が沈黙している間に蓮は私の服を全て脱がせた。私はたかまっていく自分を感じた。
明日になれば全てが終わる。体はたかまっていくのに、心はひどくむなしかった。
早くこの潜入捜査から逃げ出したい。そうなれば二度と蓮と会う事はなくなる。
蓮と私の立場の違いにただただ絶望したが、総てが消えて無くなる訳ではない。残っているのは、蓮への気持ちだ。蓮の強さと私への優しさを、私は憎む気にはなれなかった。
蓮が私を欺いた訳じゃない。
私が蓮を欺いたのだ。
「なにか怒っているのか?」
私の心うちは表情にも表れていたのだろう。私は無表情に答えた。
『別に。』
「ならいい。久しぶりだな。」
蓮はしみじみとした口調で言った。


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