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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-28

私はそんなフールの行動に何らかの意味がある気がしていた。フールの話したい事は、蓮の部下や他の運び屋達がいてはできない話のようだ。
だが考えても仕方がない。私はフールへのこれ以上の接触は好ましくないと考えていた。
フールが社長に近い人間だとわかった以上、むやみやたらに近付くのは危険だった。今は重役会を待つ時だ…。

そして、私が待っていた知らせが入ったのはその翌日だった。
その日私は昼食とも取れる遅い朝食を済ませ、午後からのアゲハへの納品に備えていた。

突然鳴りだした携帯のディスプレイを覗き込むとそこには蓮の名が表示されていた。
『もしもし?』
<久しぶりだな。元気か?>
携帯からは私を気遣う優しげな声が流れた。
『あら。あなたこそ、生きてたのね。』
<冷たいな。俺が君を残して死ぬ訳ないだろう。>
『そうね、あなたは殺しても死なないわ。』
私は感情を表に出さずに言った。
本当はこの5日間、蓮が何処にいるのか気がきでなかった。
<少しくらい淋しがってくれてもいいんじゃないか?俺はこの5日間、身を粉にして働いてたっていうのに。>
『仕事だったの?倉庫には顔も出さなかったじゃない?』
<前に言ったろ?俺の仕事は毎日芝居をしてなきゃならないって。レイラ、君と一緒さ。>
私は背筋がヒヤリとするのを感じた。蓮は私の何を知っているのだろう。
確に私は潜入捜査という芝居をしている…。だがその事実を知っているのなら、組織の人間である蓮が私を生かしておくはずはない。
それに、蓮は自分も芝居をしていると言った……。
蓮の言う芝居の意味が分からなくなった私が無言でいると、蓮が口を開いた。
<今夜、会えないか?>
『納品の後なら。』
私は言った。
<重役会について話がある。いつもの部屋で待ってる。>
『わかったわ。』
私は蓮との電話を切るとすぐさまポルシェで築地へと向かった。

倉庫では今日も運び屋達が忙しそうに動いていた。
いつものようにダークネスをトラックに積み込み、アゲハの元へと向かう。
もう納品時のお決まりになってしまっていたアゲハとの他愛ないお喋りも今回は手早く切り上げ倉庫へと戻ると、再び青山のホテルへと戻った。
時刻はまだ夕方4時。蓮との約束にはまだ猶予がある。そして携帯を取り出すとある所に電話をかける。

落ち着いた調子の声が聞こえた。声の主は蓮ではない。麻取の上司、永井である。
永井は電話をかけてきたのが私だと知ると、こう言った。
<体の方は大丈夫かね?こちらは君に言われた通り政府への協力を仰いだ。すると、INCがこの案件に非常に興味をもってくれてね。君の潜入している組織の摘発の際はINCが全面協力してくれるそうだ。>
数年前にアメリカの提唱で設立されたのがINC=インターナショナル・ナルティコックス・コントロール(国際麻薬機関)である。
INCの任務は、麻薬原産地の衛星による監視、製造、密売組織の実体調査などである。
『INCが?心強いですね。』
<私も驚いている。まさかINCが協力を申し出てくるとは。これで麻取だけでは不足していた銃火器への対応も安心だろう。それで、摘発の機会はありそうかね?>
『極めて近いうちに重役会という物が開かれます。』
そして私は重役会が開かれる事になった理由を含めてこれまでの経過を永井に伝えた。
<驚いたな。君がそこまで現場向きだとは思っていなかったよ。>
永井はトラックジャッカー達との交戦や尾行に対して言った。
『私は現場が天職だとおもっています。』
<そうかも知れないな。まぁ、この話は君が晴れて麻取へと戻った時にしよう。密造地は突き止められそうか?>
やはり、永井を始めとする政府や警察の人間が一番重要視する点は密造地だ。


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