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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-27

『フールはそんなに社長に近い人間だっていうの?』
「てゆーか、今の組織は実質フールが動かしてる様なもんだよ。あたしとの契約を決めたのも、このマンションをあたしによこしたのもあいつ。」
私は本当に重要な情報を手に入れようとしていた。
『知らなかったわ。あたしもこんなマンション借りてもらおうかしら。』
「それイイ!社長は死にかけらしいから、フールに言えばきっとすぐ借りてくれるよ!」
アゲハは無邪気に言った。
社長が死にかけている…。その代わりに社長の仕事を行っているのがフール。
『フールってどんな男?』
「なぁに、落とすつもりぃ?」
『あたしの好みではないけど。出世出来るなら考えるわ。』
私は他愛のない会話からフールを探る。
「なんか謎って感じ。でもそんなミステリアスさがあたしは好み〜!」
『もしかして、惚れてる??』
「惚れてはないケド、仕事のパートナーにはいいかもって所かな!」
こんな会話をしていると、とても彼女がドラッグディーラーとは思えない。まるで普通の女の子と変わらないのだから。
「なんかね、筴に似てんだ。」
『キョウ??』
数年前に殺された、若者相手に商売をしていたドラッグ密売人の名だ。私はその名を知らない振りをしてアゲハに尋ねた。
「あ、昔あたしを拾ってくれた男の名前なんだ。今のあたしがあるのも筴のお陰。」
そこからアゲハは筴との出会いや、筴の仕事を語った。そして、私が現在潜入している組織との契約を最初に結んだのも筴だったという事も。アゲハはまさに筴の後を継いだのだった。
『ねぇ、どうして彼は組織との契約を取りつけられたの?組織は国内流通は固くなに拒んでいたはずでしょう?』
私はアゲハの口から、密造地を突き止め、それをネタに組織との契約にこぎつけたという言葉が聞かれるのを期待した。少しでも密造地の手掛りになれば…。
しかし、彼女も日々危険と隣り合わせの生活をしているだけのことはあり、軽々しく口に出来る内容の話ではないと判断したのだろう。
「それは秘密にしとかないとね。」
そう言うと、彼女は早々に会話を切り上げようとする。
私はこれ以上の詮索は諦め、今回のダークネスを彼女へと差し出す。
『これが今日の分。確認して。』
「確かに受け取ったよ。今日はたくさん話せて楽しかった!」
『私もよ、じゃぁ。』

私はアゲハのマンションを後にした。
そしてトラックを倉庫に戻し、足りない睡眠時間を補う為にポルシェで青山のホテルへと帰る事にした。
今日はゆっくり休もう。また明日からは気の抜けない日々が続くのだから。

次の日からも私はアゲハへの納品に追われた。昨日と同じ様にパートナーは無く、私1人での納品だったが、アゲハが私を自分のマンション呼ぶ事はなかった。
余計な警戒心を抱かせてしまったのではないか、そう心配したが、アゲハの態度はまるで変わりなかった。使われていない店舗跡等に私を呼び出し、他愛のないお喋りをしては笑い、ダークネスの確認をして先に立ち去る。
そんな日々が5日間程続いた。
その間蓮が倉庫を含め、私の前に姿を現すことはなかった。
蓮の部下の男によると、仕事を全て部下に押し付け、時たま各地への納品が滞りなく進んでいるかと確認の電話をしてはくるが、こちらからの電話には応じる気配すらないという。
代わりに倉庫に姿を現したのはフールだった。特に用事がある様子でもなく現れたフールは、必要性の感じられない倉庫内のチェックをすると私を食事に誘った。
「食事でもどぉ?お話でもしながら。」
『お断り。』
私が即座に断るとフールは肩をすくめ、足早に去っていった。


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