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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-23

「あんまり遅いからさ、客捕まえたんだ。モーテルに入ろうとしてたから、呼び止めて薬やらせたの!!そしたら倒れるまで突っ込み続けたんだよ?!サルみたい!!世の中バカばっかだよね〜。まぁこぉゆぅのがいるからあたしは仕事が出来るんだけど!ははっ!」
止まる事なく言い放つと、床に投げ捨ててあった革のジャンプスーツを取り上げ、その体をねじこむ。
今日のアゲハの雰囲気は前回会った時とはまるで違っていた。奇妙な程に饒舌で、違和感を覚える程陽気だ。おそらく、彼女もなにかのドラッグを服用しているのだろう。
『これが今回の分よ、確認して。』
そう言ってアタッシュケースを手渡すと、アゲハはテキパキと中身の確認を済ませた。
「確かに受け取ったよ、レイラさん、ご苦労様。」
アゲハは起き上がる気配のない裸体の2人の側に携帯番号のメモを残すと、フールに対して意味ありげな笑いを残して去って行った。
一言も言葉を発せずに事と次第を見守っていたフールは無表情を崩さずにアゲハを見送った。
『これで今日の仕事はおしまいね。自動車工場の方はどうする?』

―私はトラックジャッカー達の排除に肯定的であった。
私は麻取の人間であり、現在はそれを隠し麻薬犯罪組織に潜入している。目的は組織の摘発、決して組織繁栄の手助けの為ではない。アゲハへの納品は組織に潜入し続ける為に必要な事と考えているが、トラックジャッカー達の排除に私が携る事は、いささか麻取としての潜入目的を逸脱してしまっている。それに私自身が刑事訴追を受ける可能性もあった。
それでも私がトラックジャッカーの完全排除にこだわったのは、社長と呼ばれる組織の頂点に立つ人間への足掛かりを掴む為だ。酷く閉鎖的なこの組織において、その社長の情報が末端の運び屋にまで届く事は考えられない。社長へと近付くには組織の階段を登れる所まで登るしかない、そう私は考えていた。
その方法として、私はトラックジャッカーの完全排除という最も分かりやすい形での組織貢献を選んだのだった。

「待って、聞いてみるよ。」
そう言ったフールはすぐさま携帯を手に取る。
「俺だ、駆除の方はどうだ?あぁ…あぁ……そうか、ご苦労だった。……あぁ、此方も無事に済んだ。間もなく戻る。」
私と会話を交す時は声のトーンも軽く、人懐っこい印象を持たせる様な話し方をするフールであったが、携帯の受話器へと送り込む声は同じ人物の発する声とは思えない。
フールは私に対して、全く本来の自分を見せていないのではないか。麻取という正体の露見を防ぐ為にも、組織の全貌を知る社長へと近付く為にも、フールに気を許す事は出来ない。私は直感的にそう感じた。
「レイラさん、どうしたの?怖い顔しちゃってさ。」
知らずに顔の表情がこわばっていた。
『ゴキブリ駆除の心配してたのよ。あの場でグレネード撃っときゃ良かったんじゃないかって。』
とっさに取り繕った言い訳ではあったが、フールは納得したように頷いた。
「その心配はいらなかったよ!工場の中でトラックジャッカー8人を見事に制圧。で、その時6人は殺しちゃったケド、残りの2人を拷問した。」
『尋問じゃなくて?』
「拷問。散々いたぶった後殺しちゃったみたいだから。」
フールは掌を上に肩の高さまで上げると、ヤレヤレといった仕草をする。
『で、常務の裏切りの裏は取れたの??』
フールのふざけたノリに乗せられないように私は厳しい口調で言った。
「もうバッチリ。本当にレイラさんのお手柄だよ。これなら正社員確定かな?でも蓮は怒ってるって話だ。もともとトラックジャッカー達の調査には蓮があたってたから、当然と言えば当然だけど――。」
私はタバコに火を着け、フールの言葉を遮るように言った。
『帰りましょ。』
これ以上、フールと2人きりで時間を共有したくなかった。
何より、フールにの口から蓮の名が発せられるのが耐えられなかった。


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