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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-21

男の話は意外なほど収穫の多いものであった。
トラックジャックを計画し実行させていたのは、蓮の上司であった常務だったのだ。
常務は会社から受けていた報酬だけでは飽き足らず、トラックジャックで奪ったダークネスを売り捌いた金で自分の懐を肥やしていた。トラックジャックがしやすいように、ダークネスを運ぶトラックがトラックジャッカーを発見した際は一般道に降り、トラックジャッカーを排除してから納品するよう指示を出していたのも常務であった。
となると、囮トラックの存在が不自然に感じるが、囮の用意は蓮の支持によるものだったと考えれば納得がいく。
常務が囮トラックに反対をすれば、嫌でも疑いの目を向けられていただろう。
今まで組織が国内でダークネスを流通させていなかった事から考えて、過去に摘発されていた物は常務がトラックジャックで奪った物だったのだろう。

そして男は更に、トラックジャックを行ったグループは密売にチェコ人の売人を使っていた事も話した。
私と蓮が2度目に出会った時、私を犯そうとしたチェコ人もその仲間だったのだろう。
そのチェコ人がダークネスの国内での密売に関わっていると突き止めていた蓮は、私達とは別のルートからトラックジャッカーの間近まで迫っていたという事になる。

男は命乞いをしながら必死に知っている事を話した。しかし、自分達のアジトの所在だけは何度脅しても話す事はなかった。
「常務やチェコ人達の事はすぐ吐いたってのに、自分達の身は守りたい訳?」
フールは呆れたように言い、撃たれた男の爪先を踵で踏みつけた。男は絶叫し、痛みに気を失いそうになる。
それでも話そうとしない男に見切りをつけた私は、男のもう片方の爪先もCzで撃ち抜いた。そして、泣き叫びながら命を乞う男を残し倉庫の入り口へと歩く。
「あいつ、どうするの??」
後からついてきたフールが訪ねる。
『ここに捨てて行くわ。』
フールは訳が解らないというような顔をしている。
「殺さないの??」
『今はね。』
私は入り口を塞いで止まっている3台の車のタイヤ全てにCzを撃ち込んだ。更にフールの乗ってきた囮トラックにもCzを撃ち込む。
『行くわよ。』
フールを促し、倉庫の裏に停めていたポルシェへと乗り込む。
「一体どうするのさ??」
『後で説明する。』
ポルシェのアクセルをふかし、男に私達が立ち去ったと分からせるようにポルシェを発進させる。そして、倉庫街の入口に着くと目立たぬ場所でエンジンを止めた。
あの廃倉庫には男が生きて残っている。帰る足の無い男は間違い無く仲間を呼ぶだろう。そして男を回収した仲間は、決して男が話す事の無かったアジトへと帰る。
私はそれを尾行しアジトを突き止めるつもりだった。
「なるほど!!さっすがっ!」
それを聞いたフールは納得したように頷いた。ここからは男の仲間が現れるのをただひたすら待つだけだ。
「退屈〜。」
少しして、飽きてしまったフールが嘆きだした。まるで子供の我が儘だ。
私が呆れて溜め息を付くと、不意にフールの手が私の腰に伸びてきた。さらにもう片方の手は私の首筋に回された。そしてその手は有無を言わせぬ力で私を引き寄せる。
フールは唇と唇が触れ合う程の距離まで私を引き寄せると、首筋にあった手で私の髪をかきあげ、悪戯っぽく額にキスをした。
「ねぇ、蓮と寝た?」
フールの好きにさせていた私は唐突な質問に戸惑った。
「ねぇ、どうなの?」
『寝たわ。』
素直に答えるとフールは急に笑いだした。そしてもう一度額にキスをすると私を離した。
「蓮の女じゃぁ手は出せない。」
その言葉に私は違和感を覚えた。
『別に寝たから蓮の女って訳じゃないわ。もちろん蓮もあたしの物じゃない。』
そう一気に吐き出した。
「レイラさんと蓮は似たものどうしだよ。いや、そっくりだ。似ているからこそ惹かれ合うんだろ?違う?」
その問いに私は何も答える事が出来なかった。返す言葉が見付からなかっただけではない。1台のバンが倉庫街へと入ってきて、トラックジャッカーの男を残してきた廃倉庫の方向へと走り去ったのだ。
『来た、準備はいい?』
「折角楽しい話してたのにね。」


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