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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-19

2時間後私は常磐道を北に向かっていた。間に5台程の車を挟み、前方をフールのトラックが走っていた。
「なぁ、これから俺はどうなるのさ??」
『トラックジャッカーたちの囮になってもらうわ。』
フールは少しの間沈黙した。
「死にそうになったら助けてくれるよね?」
情けない声が無線機から流れてきた。
フールは蓮とはどんな関係なのだろうか。蓮はフールの事を部下とは言わなかった。
「ねぇ、無視しないでよ。」
『わかったわよ!』
ただ確かなのは、フールが蓮よりも大分やかましいタイプの男だという事。

何度かフールとくだらない会話のやりとりをしていると後方を走っていた大型のバンがスピードを上げ、ポルシェを抜いてフールのトラックの後ろについた。他にも仲間と思われるセダンとスポーツカーがトラックの前後を囲んだ。
『来たわね。』
「そうみたいだ。どうする?」
トラックジャッカーたちはトラックが一般道に降りる事を予測しているだろう。これまでもトラックジャッカーに狙われたトラックは一般道に降りた後、トラックジャッカー達の襲撃に応戦してきたのだから。
私はその点に疑問を抱いていた。トラックジャッカー達を完全にまいてしまえばアゲハへのダークネスの納品は滞り無く済むではないか。トラックジャッカー達への応戦が、蓮からの指示だったのか、蓮の上司であった常務からの指示であったのか私は聞かされていなかったが、まるでトラックジャッカー達にダークネスを強奪させるチャンスを与えているようにも思えた。
『ここは奴らの好きにさせましょ。一般道におりて、戦争が出来そうな所まで行って。』
「わかったよ。」
『私は少し離れてついていくから。』
言葉通り私はスピードを緩め、遠ざかっていくトラックとトラックジャッカー達3台の車を見送った。


フールのトラックは一般道へ降りてもスピードを落とすことなく東に向かい、何処かの寂れた倉庫群へと入って行った。
『何処か身を隠し易いような場所はない?』
「崩れかけの倉庫がある。中に入っていいかな?」
『いいわ。入ったら応戦の準備。』
フールは言われた通りに崩れた倉庫の中にトラックを止めた。トラックジャッカーたちは倉庫には入らず、倉庫の入り口を塞ぐ様に車を止めた。
私はトラックジャッカー達に見付からないようにポルシェを倉庫の裏に回した。そしてエンジンを止めて武器を持ち、裏口から倉庫の中へと入った。

倉庫の中は薄暗く、天井近くに設けられた明かり取りの窓から少しの光が差し込んでいるだけだ。
本来はどこかの会社が荷物の保管に使っていたのだろう。だが使用されなくなった今は荒れ果て、不要なコンテナがあちこちに放置されている。私はそのコンテナの陰に隠れながら倉庫の中程へと進む。
フールのトラックが見える位置まで足を進めると、バンとセダンに乗っていたトラックジャッカー4人が車を降りるのが見えた。4人は真っ直ぐトラックへと歩み寄る。手にはウジーのサブマシンガン。

―ここはフールのお手並み拝見といこう。

そう思い、フールの乗っているトラックの運転席を見る。しかし、さっきまでいたはずの運転席にフールの姿はない。
トラックジャッカー達4人はトラックにある程度近寄るとウジーを撃った。目的であるダークネスの入った保冷庫部分を避け、フールの乗っているはずの運転席を。
被弾した運転席部分のガラスは砕け、車体には無数の穴が空いた。フールが乗っていれば間違い無く命はない。
トラックジャッカー達は運転席を確かめることもせずに保冷庫を開けようとした。


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