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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-17

「勘弁してくれ……」
常務は泣き声をたて、がっくりと膝をついた。
『あら残念。』
私はCzをしまった。
『せっかく常務と楽しめると思ったのに。』
そして素早く扉に歩み寄ると鍵を外した。蓮もその間にナイフをしまっている。
扉が開き、常務の部下が部屋の中に足を踏み入れた。部下は部屋の中央にひざまずいている常務を驚いたように見つめた。
「なにがあったんです?」
部下が沈黙を破り口を開いた。
私は肩をすくめてみせた。
『常務さん、勃たなかったのよ。』



私と蓮は常務には天国旅行を楽しんでもらうことにした。ダークネスを10錠飲ませ、レストランの個室に置き去りにした。時期に発見される常務は言葉を話す事もままならず、酷い禁断症状に苦しむ事になるだろう。もちろん仕事に従事する事など出来るはずもなく、いくらコネがあると言っても会社は彼を放り出すか、消すかするだろう。
常務の部下には蓮が
「お前には暫く違う仕事にあたってもらおう。」
そう言って何処かへと連れて行った。

私は青山のホテルへと戻ると蓮からの連絡を待つ傍ら、頭の中を整理する事にした。

これで常務は会社からいなくなった。恐らく、常務の直属の部下であった蓮が常務の仕事を引き継ぐ事になるだろう。そして、蓮の側にいれば私も多くの情報を得るチャンスがある。
私にとって一番理想的な捜査の終結は、私自身が密造地を突き止め、蓮を含む組織の全ての幹部や、アゲハの様に流通に関わる人間達が逮捕される事。
その為には、密造地だけでなく、組織の幹部達も把握することが不可欠だ。組織の幹部達が一同に会する様な事があれば、その現場を摘発することが出来れば一番理想的だ。
そうなればどんなに閉鎖的で秘密主義な組織でも壊滅は免れない。私に把握しきれなかった組織の仕組みがあったとしても、幹部の誰かに司法取引を持ち掛ければ組織の完全崩壊も可能だろう。
司法取引を持ち掛けるのであれば組織の全貌を知る【社長】と呼ばれる人間が適任だろう。秘密主義を徹底している組織である以上、社長以外誰も知らない事実があるかも知れなかった。
しかし私は蓮に司法取引を持ち掛ける事を考えていた。頭の中では社長以外に適任者はいないとわかっているのに、なんとかして蓮を司法取引に応じさせる事はできないだろうかと考えている私がいた。
蓮を失いたくなかった……。

犯罪者とわかっていて好きになった。
いずれは離れ離れになると知っていて愛した。
もし私がこのまま麻取という仕事を捨て、犯罪に身を染めきってしまえば蓮を裏切る必要はなくなる…。ただ、そんな事は許されない。私自身、そんな自分を許す事は出来ないだろう。



蓮から携帯へと連絡があったのは私が青山のホテルに戻ってから2時間後の事だった。
「うまくいったな。これからは重役会の招集を待つばかりだ。」
『重役会??』
私は初めて耳にする言葉を蓮に尋ねた。
「あぁ、会社の重役に関わる何か重要な事が起きた時、部長以上の幹部が一同に会すのさ。俺が入社してからは1度も開かれた事はないが、なにせ今回は重役中の重役、常務がラリって発見されるんだ。ほぼ間違いなく招集がかかる。」
蓮は一気に言った。


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