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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-16

「さ、座って、座って!」
常務は言って手を擦りあわせ、自分の隣の椅子をひいた。
「いい趣味してるよ!もっともそのスタイルなら、何着ても似合うだろうけど。」
蓮は<ヘドがでそうだ>と言わんばかりに顔をそむけている。恐らく、蓮はこの上司を心から軽蔑しているのだろう。
私は軽く礼を言い、バッグから煙草をとりだした。常務がさっと純金のライターを差し出す。
『ありがとう。』
そう言って常務の手に自分の手を添え、私は火を移した。常務の目尻が垂れ下がった。
『常務さん、お洒落なのね。』
「嬉しいねぇ。わかってくれるんだ!」
心の中では蓮の方がよっぽど趣味がいいと思いながらも、全身をブランド物で固めた常務を見た。
『それで常務、私を常務の会社の社員にしてくださるってお話、考えて頂けたかしら?』
「もっちろん!ただ、蓮の部下ではなく、俺の秘書としてだけどね。」
やはりそうきたか。この事は蓮からの話を聞き、予め想定していた。
『それは困りますよ〜!私は優秀な蓮さんの下で働きたいんです。』
「じゃぁ、入社は認められない!絶対に俺の秘書になってもらうよ!!」
常務が食い下がって来た場合の対処法も想定していた。
『そういえば、料理遅くありません?』
常務の部下にそう言って微笑む。すると部下の男は
「はい!只今見て参ります!」
言って個室を出て行った。それを合図に私と蓮は立ち上がり、蓮は個室の鍵を中からかけた。
「おい、蓮!何をする?!」
そう怒鳴りつけた常務に蓮は冷ややかに言った。
「黙れ、もうお前には嫌気がさしてね。消えてもらう事にしたよ。」
「なんだと?!ふざけた事を……」
そう言いかけた常務の言葉が止まった。蓮がいつの間にか取り出したナイフを常務の喉元にあてがったからだ。
『誰もふざけちゃいないわ。』
「てめぇもグルか…。」
常務の額には脂汗が滲んでいた。
「腕も能もないお前に用はないんだ。コネでやっとこの会社にいれる様な奴にはな。」
私は静かに常務の背後に歩み寄った。愛撫するように常務の腰に触れ、ベルトに挟んであったチタン製のオートマグナムを抜き取る。常務ははっとして私を振り返った。
『あら、常務さんったらお洒落。チタン製の銃って高いのよね。ましてオートマグですもの、これ1挺で車が買えるわ!!』
「そ、そうだ!だから返せ!」
『馬鹿みたい。』
「何だと?!」
常務は何度も瞬きしながら私を見る。私は軽蔑しきった口調で言った。
『だってそうでしょ?これで誰かを撃ったら、ライフルマークでアシがつくから、2度と使えなくなる。そうしたら捨てるわけ?もったいなくて出来ないでしょ?人を撃つ度胸が無い証拠ね。』
「何言ってやがる。俺が腰抜けだってのか!!!」
『じゃ、返すからあたしと勝負する?』
私は胸の谷間から蓮から渡されていた9mmを抜きだすと、常務の顎の下につきつけた。そして棒立ちになった常務の手にオートマグを押し付ける。
『どうぞ。いつでもいいわよ。』
「チェコスロバキア製、Cz75だ。」
蓮が常務に言った。常務の目が激しく動いた。爪先立ちになり、私と蓮を見比べる。
「こ、こんなの、きたねぇぞ……」
『だから早く受取りなさいよ、自分の銃を!』
その時個室の扉がノックされた。ノブががちゃがちゃと回ったが扉は開かない。常務の目は扉に釘付けになった。
『大丈夫。鍵はちゃんと蓮がかけてくれたから。』
甘く囁くように私は言い、Czの撃鉄を起こした。
『楽しみましょ?』
常務の顔からは大量の汗が流れ、震えている右手がようやくオートマグを掴んだ。だが握り直そうとした弾みに床へと落とした。


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