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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-14

「レイラ、確か君は日本人だと言ったな、本当なのか??」
蓮は窓辺のソファに座り、ブランデーのストレートをすすっている。窓からは品川駅を望む素晴らしい夜景が見渡せた。
『本当よ、祖父がロシア人。私は日本人。』
「驚いたよ。」
『そうは見えなかったケド。玲良と書くの。』
蓮は息を吐いた。
「君にプレゼントを用意したんだ。」
『何?』
「そこに落ちてる上着を取ってくれ。」
私は全裸のまま立ち上がった。蓮の残した火照りがまだ体の芯に残っている。
カーペットの敷き詰められた床から、仕立てのいいロングジャケットを拾いあげる。渡された蓮は内ポケットから皮のキィホルダーを取り出した。アイグナーだ。
「コレさ。」
私は受け取ってアイグナーを開いた。キィが2個留められている。1つにはポルシェの刻印が入り、もう1つは電子ロックの鍵だった。
蓮は醒めた表情で煙草に火をつけた。
「別にそいつで縛る気はない。ただ長生きしてもらうには、アシの早い車と、セキュリティの行き届いた塒が必要だ。」
私は息を吸い込んだ。
「もらうのが嫌なら、貸しておくだけでもいい。言っておくが、部屋の鍵にスペアはない。俺だって入れて欲しい時はノックする。」
『何処なの?』
「この近くだ。家具も揃っている。」
『どうしてそんなによくしてくれるの?』
「言ったろ、君は最高のパートナーだ。最高の女に投資をするのも悪くないと思った。」
『そう、いつかあなたと旅行にでも行きたいわね。』
私は叶わぬ夢と知りつつも口にした。
「南アフリカに、ビーチとコテージしかない小島のリゾートがあるそうだ。珊瑚礁の海と高床式のコテージで、食い物はボートで運ばれてくる。他には誰もいない。島1つを独占するんだ。」
『良いわね。』
そう言って私はポルシェのキィだけを抜き取った。
『車は借りるわ。けど、塒は社員になれた時、会社に借りてもらうわ。』
「わかった。それから、常務に会わせる話だが…。」
蓮はそこまで言って黙った。
『会わせてくれるの?』
「ただ、相当なゲス野郎だ。レイラ、きっと君と寝たがる。」
『なら、たらしこんでやるわ。あなたの上司の常務がいなくなればあなたの出世も近付くんじゃない??』
「本気か?」
真面目な顔をして蓮は尋ねた。
『本気よ。私もあなたと同じ様に総てを知りたいの。』
「じゃぁ1つ、全貌を掴む為のヒントを教えよう。組織が秘密主義を徹底するのは何故だと思う?」
『何故?』
「ダークネスを何故今まで日本国内で流通させなかったのか、ということを見落としていないか?」
『え?!!』
「アゲハが現れるまでうちの会社は頑に国内流通を拒んできた。それを何故急にアゲハへダークネスを卸す事を決めたと思う?」
『アゲハに弱味を握られたとか。』
「その通り。うちの会社がダークネス密売容疑で摘発された場合、警察が最も知りたがる情報はなんだ??」
『密造地。』
「君は頭もいい。俺はアゲハが密造地を突き止め、その秘密を守る代わりに国内流通を認めさせたと考えている。そして、更にアゲハは自分が消されない様に巧妙な保険もかけたはずだ。でなければ、密造地を知ったアゲハが生きているはずがない。」
私は言葉も出なかった。
「アゲハが密造地の情報を掴んだということは、密造地が日本国内にある可能性は高い。」
『?!?!』
信じられない気持ちだった。ダークネスが日本国内で密造されているとは麻取の人間も、国際麻薬捜査機関の人間でさえも考えていないだろう。
私は一度に詰め込まれ過ぎた情報を整理するために、独りになりたかった。


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