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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-12

囮のトラック2台は私のトラックを挟むように前と後ろを走っている。
『トラックジャックの事件は警察沙汰にはならなかったの?』
「なったさ、だがトラックに放置された死体は身元不明、積み荷は持ち去られていて無し。トラックは長期リース会社から貸しだされていたが、借り主の【ベイコンテナ】という運送会社は実在せず、書類も免許証も何もかもが偽造。これじゃ警察もお手上げさ。俺をなめてもらっちゃ困るね。」
『仕事が出来るのね。』
私は嫌味を込めて言った。
「ありがとよ。」
蓮は嫌味と知ってその言葉を受け入れた。

築地を出てから2時間が経過した頃、私は不審な追尾車をバックミラーにみとめた。
『もしかしたら、歓迎会が始まっちゃうかも。』
「そうか、来たか。」
蓮は慌てる様子もなくサブマシンガンを膝に乗せた。
『どうする?』
「一般道に降りるんだ。返り討ちにしなきゃ荷物は届けられない。」
そう言うと蓮はトラックに付けられた無線を手にとり、前後の囮トラックに指示を出す。
すると2台のトラックはスピードを上げ、私の乗るトラックの遥か前方へと走り去った。
「5台いるな。今の様に3台の目標がバラバラに離れれば、奴らも別れて追わなければならなくなる。まずは俺達に着いてくるトラックジャッカーを片付けよう。」
『了解。』
私は蓮の指示に従い一般道に降りると、人気の無い廃屋地帯へとトラックを進めた。
放棄されたとおぼしい低層ビルのすぐ横にトラックを止めると、後方からバンとGTRが近付いてくるのがわかった。
「運が悪かったな、2台だ。」
私は左右から狙撃される危険を減らす為にビルの踊り場部分にトラックを侵入させた。
「賢明な判断だ。ここでの対応は君に任せよう。さて、どうする?」
『援護位は頼めるのかしら?』
蓮は両手を上げ私に笑いかけた。おおせのままにという意味らしい。
私は蓮から渡された9mmとサブマシンガンを手にビルの中に降り立った。向こうからいきなり撃たれるという事も考え、運転席のドアを開け放ち相手からの目隠しにした。
2Fへと登る階段を見付けると、踊り場の窓から外に自分の姿が写らないように注意しながら2Fに進んだ。私は窓からトラックジャッカー達を狙撃しようと考えた。
だがしかし、2Fのフロアの窓にはどれも不透過なフィルムが貼られていて狙撃は不可能だった。今まで閉まっていた窓が開けば嫌でもトラックジャッカーたちの注意を惹いてしまう。
私は仕方なく3Fへと進んだ。地上からの距離が離れた分、狙撃の命中率は下がるだろうが、マシンガンならば狙いなど関係無い。一度引き金を引いてしまえば目標が無くなるまで引き金をはなさなければいいだけだ。
3Fの窓にはフィルムは貼られておらず、運よく割れた窓ガラスから狙撃が可能だった。
私はトラックジャッカー達に気付かれぬよう細心の注意をはらって窓からサブマシンガンの銃口を付き出した。
前方を走ってきたバンのフロントガラス付近に銃口を向け、発砲の衝撃で自分の肩がどうにかならない事を祈って引き金を引いた。
バンのフロントガラスは瞬く間に粉ごなに砕け、被弾のショックで車体が揺れていた。
しかし、揺れるバンのすぐ後方に止まっていたGTRは3Fの窓に映る私の姿をみとめ、ライフルで応戦してきた。
拳銃よりも遥かに大きな銃声と共に、私がサブマシンガンを構えた直ぐ横の窓が砕け散った。
銃を向けられるのはこれで何度目だろうか。何度経験してもゾッとする状況に、私はサブマシンガンの銃口をGTRへと向けた。
しかし引き金を引いても、銃口から弾薬が出る事は無く、私は弾薬を使いきってしまった事を知った。予備のマガジンはトラックの中だ。


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