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アゲハ
【その他 官能小説】

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レイラ-11

蓮はコンテナへと足を踏み入れると私に銃を手渡した。
「9mmのオート、君には一番扱いやすい銃だろう。」
『ありがと。』
私に渡した銃以外にもいくつかの拳銃とサブマシンガンと予備マガジンを持ち出すと、蓮は1台のトラックの助手席へと乗せた。
「さて、荷物とのご対面だ。」
そう言った蓮は私をトラックの横に残し、何処かへと歩いていて行った。
戻ってきた蓮の手には大きなアタッシュケースが2つあり、そのアタッシュケースをトラックの保冷庫に乗せるとケースを開き中身を私に見せた。
「ダークネスという。中国で発明された有名な漢方薬だ。だが今は中国でも作られてはいない。」
ケースの中にあったものは丁寧に梱包された黒い粒状の薬。
私の記憶が確かならばダークネスという麻薬が日本で摘発されたのは3ヶ月前を最初にまだ数回。つまり日本の裏市場にはまだ殆んど出回っていないと考えるのが自然だ。
『どこで作っているの??』
「俺も知らない。知っているのは社長だけだろう。」
『飲んだらどうなるの?』
「1泊2日の天国旅行さ。肉体的な依存は少ないが、精神的な依存は半端無い。」

私の仕事はこのダークネスをアゲハに届ける事。
しかし本当の目的は蓮の組織を摘発し、ダークネスの流通を止める事。だがこの倉庫にあるダークネスを総て抑えたとしても流通自体が止まる訳ではない。蓮さえも知らない密造地を突き止めるか、組織を壊滅させなければ。
コカを原料にしたコカイン、阿片を原料にしたヘロインなどは、植物が製造の根幹にあるため、密造組織の存在を把握するのは比較的容易である。
しかし一方、ダークネスや覚醒剤のような合成麻薬は、植物を原材料としないため製造地の特定が難しく、流通経路の実体も明らかになりにくい。
国際麻薬取締機関のアンダーカバーでも手を焼くような捜査が、勝手な一存で許可もなく動いている私に勤まるのか、一瞬不安を覚えたが、この捜査の失敗、つまり組織の人間への正体の露見は私の死を意味する。

―もう戻れない所まできてしまった。


保冷庫にケースをしまうと蓮はトラックの助手席へと腰を降ろした。私は運転席に座り、トラックのエンジンを始動させる。
「こいつで六本木まで行く。到着時刻は今から5時間後。」
『5時間?!!』
驚いた私に対して蓮は表情を変えずに言った。
「まっすぐ向かえとは言っていない。まず茨城に向かって、そこから一般道を南下する。」
『何のために?』
「トラックジャッカーの排除と尾行を撒く為だ。他に2台の囮のトラックをつけるが、アゲハの所に着くまでには確実に排除しなければならない。」
私はトラックを発進させた。続いて2台の同じ保冷トラックが発進した。
『運転に注文は?』
「警察の目を惹かなければ好きにしてくれ。」
私はレインボーブリッジを渡り、有明から高速の東行きに合流した。浦安インターまで走ると、一旦一般道に降り、今度は西行きに再合流した。
『おたくの会社にトラックは何台あるの?』
「長期リースだ。」
蓮は無表情に答えた。
『今までにトラックジャックには何度会ったの??』
「輸出用の荷物も含めれば8度。全て運転手は殺され、ダークネスを1粒残らず持ち去られている。」
『なるほど、随分危険な仕事を引き受けちゃったものだわ。』
「うちはもともと輸出専門の商社だったんだ。だがアゲハになら品物を国内で流通させると、急に重役が決めてね。ダークネスの供給源をアゲハ1人に絞ると決めた以上、トラックジャックなんかで商品が横流しされるのは非常に迷惑だ。」
『なぜあなたの会社の重役達はアゲハだけにダークネスを卸そうと決めたの??』
「それも秘密主義が会社の意向のせいか、俺には伝わってこない。」
蓮はため息を吐き、視線を外へと向けた。


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