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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・観察 〜-2

 今日、同室の先輩は、例外なく後輩の不始末を償った。 B22番のように『ロシアンルーレット』を受け入れた者もいれば、B29番のように『高所目隠しダイブ』にチャレンジさせられたものもいる。 私の記憶が正しければ、B33番は『高圧通電』に耐えさせられた。 20Vの電流を直列に流され、自分の意志で両極を掴み、10秒間耐えるというテスト。 一瞬でも気を抜けば命が跳んでゆくし、直後に心肺蘇生をしなかった場合ほぼ絶命するという、最も過酷なテストの1つだ。 後輩からすれば、自分のために先輩は命を賭けてくれたと思うのだろう。 私としては笑止だが、これも一種の恩義ではある。

 ――ぶっちゃけた話、茶番といえば茶番だし、そうでないといえばそうではない。 例えば私はロシアンルーレットに熟練していて、初弾に実弾を配置するような失敗は絶対にしない。 ゆえに私に判定を求めに来たB29番たちは、私を信用するがゆえに、覚悟を決めて引き金を引いた。 そういう意味では単なる茶番だ。 ただ、可能性は100%ではない。 絶対に実弾を撃たないような、そんなシステムは存在しない。 私が失敗することもあるし、本当に命を落とす可能性は、常にそれなりの確率で存在する。 そういう意味では、紛うことなき『命懸け』なわけだ。

 何か負い目を持った時、人の行動はガラリと変わる。 実際先輩に接する後輩の懸命さは、33番を例にあげるまでもなく、ほぼ全員が昨日と比べて見違えていた。

 トイレの中で完結する2人の排泄を横目に、個別の部屋も映してみよう。 デスクに向かうB29番と、隣で気をつけをする29番。 2人は、一緒に本を読んでおり、本とはB29番が学園から予習のために持ち帰った『社会』のテキストだ。 本日の儀式――先輩のどんな命令に対しても従う――を経て、室内での交流も解禁になる。 一定の上下関係は当然存在するし、今後も絶対服従は続くのは勿論だが、『お喋り』程度は先輩の判断に委ねられる。 本を読むことも、お喋り同様、寮識の範囲内で許されている。

 少し音声を拾ってみよう。 常に音声をONにすると煩くてしょうがないため普段はOFFにしてあるのだが、基本的にすべてのモニターには集音マイクがつけてある。

『――は、思想の変遷を追っていくためで、単に出来事を覚えたってしょうがないんだ。 何が大切かっていうと、今の思想と比べて昔は劣悪だったことを、しっかり論証すること。 試験では年代や単語を聞かれるよりも、論述が中心になってくる。 ちなみに【里奈】にとって、歴史のテストってどんなイメージ?』
『あの、私が幼年学校で習ったときは、西暦で色々並べ替えたり、そういうのでした』
『あ〜、じゃあ苦労すると思うよ〜。 例えば『伊半島勃興期の女性不具を証明する事例を挙げ、現代と反する状況を1000文字以上で述べよ』みたいな問題、できそう?』
『なんですかそれ……。 すいません、あの、まったくできそうじゃないです。 わたしの歴史って、その、『いいくにつくろう、鎌倉幕府』みたいな感じなんですけど……それに、1000字以上って、そんなに書かなくちゃいけないんですか?』
『すぐ慣れると思うけどね。 あと【西暦】はもう止めたほうがいいよ。 学園でも社会に出てからも、これからは【皇紀】が基本になるから』
『こ、【皇紀】ですか?? えっと、あのう、それって……?』
『知らないよねえ。 じゃあ簡単に、西暦と皇紀の変換を教えてあげる』
『おっ、お願いします!』

 ……なるほど、明日から始まる通常授業に備えた予習らしい。 つくづくB29番は甘くてイライラする。 現場で困った方が長い目で見ると自主性が育まれ、29番も伸びるというのに、臆面もなく先輩面を見せようとする。 副寮長という立場もそうだが、もっと酷薄な方がスムーズに運営できると思う。 事務能力は抜群だが、本質的に私とは相容れないタイプだ。 また別の機会を見つけ、しっかり可愛がってあげるとしよう。

 次はどこのモニターにしよう……洗濯室でも映してみようか……。

 慢性的な眼精疲労に瞼をしばたたかせながら、それから約2時間かけて全てのCグループ生をチェックした。 致命的に疲労した生徒も、傷物な生徒もいなかった。 いよいよ明日から授業が始まる。 私も『技術』担当として、明日は4限からAグループ生の講義が入っている。 

 コキコキ、ポキリ。

 ソファから立って肩を回せば、凝った証に骨が鳴る。 
 こうして私にとっても貴重な週末は、淡々と通り過ぎるのだった。


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