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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・後輩 〜-3

 悄然とした面持ちの内側で、納得できていない私の気持ちが伝わったのかもしれない。 
 先輩の口から出る『芸』の有様。 一瞬でそこまでイメージしないと、私たちは『嗤ってもらう』ことすらできないんだろうか。 たかが一瞬の暇つぶしのために、全力で恥ずかしい振舞いに自分を駆り立てることだけでも、泣きたいくらい辛いのに。

「ションベン汁を絡めるなら、砂場をもっと活用しなさい。 『顔を砂に埋めて、足をまっすぐ伸ばしてから放尿』なんて、犬神家みたいでうけると思う。 『砂で台座をもってから、小便少女を模してションベン汁を飛ばす』なんてのも、砂があればこそできる形式で面白そう。 貴方は単にションベン汁を上に飛ばして、自分にかけただけ。 色々考えてるんだけど、『安直』以外に感想がでてこない。 もう砂場の『芸』はいいわ。 鉄棒でやり直させてあげる」

「……は、ハイ……ありがとうございます」

 やっとの想いで返事を搾りだす。 

「ひねったタイトルじゃ難しそうだから、シンプルに『自慰(マスターベーション)』でいきましょう。 NG連発にならないように、しっかり気合いれなさい」

「は、ハイ」

「声が小さい。 すぐに行く」

「ハイッ!」

 弾かれるように鉄棒に駆け寄る。 自慰、鉄棒、逆上がり、前回り、ぶら下がり降り。 頭の中は幼年学校の体育で習った鉄棒の技がスクランブルする。 鉄棒で自慰、鉄棒で自慰、鉄棒で自慰……。 パッと思いついたアイデアは『鉄棒に跨って股間を擦る』だったり『鉄棒を支える棒にいやらしく股間をくねらせる』だったり、鉄棒で膣を慰める発想だ。 けれど即座に全て却下する。 今度は『安直』と評されるわけにはいかない。 

 『空中逆上がりをしながら自慰』なんてどうだろうか。 響きはいいと思う。 
 でもダメだ。 哀しいことに、私は典型的な運動オンチで、空中前回りはおろか逆上がりすら碌に出来ない。 鉄棒の技以外で、鉄棒を絡めるしかない。 その上で、何とか先輩が予想しないバカっぽい『芸』で、野外のマスターベーションに取り組まなければ。

 自分の身の丈より一段低い鉄棒を選ぶ。
 手を後頭部に組み、鉄棒越しに先輩と向き合う。 姿勢は低めのがに股、つまり第3姿勢。
 とにかく必死で考えて浮かんだ1つのアイデアだ。 

「ありがとうございますッ!」

 胸をはって乳房を鉄の棒にのせ、私は満面の笑顔をつくる。 口許をほころばせ、嬉しそうに目許を緩め、こぼれそうな涙を抑える。 その上で鼻の穴を膨らませれば、これ以上ない無様な顔の出来上がりだ。 そうしておいて、

「ハイッ、ハイッ、ハイ、ハイ、ハイ!」

 許された単語を連続し、私は自慢の胸をおもいきり上下にたゆませた。 たぷたぷと歪む乳房が鉄棒を挟んで上下に揺れ、先端の乳首が棒に擦れる。

「ハイッ、ハイッ、ハイ、ハイ、ハイ!」

 満面の笑顔、豚の顔。 ここで恥ずかしがったり、躊躇ったりすれば、きっと全部がフイになる。

 鉄棒に技を持っていない自分に出来る『芸』はなくても、嗤い者に徹することはできる――それが私のアイデア。 先輩に伝わるかどうか分からないが、鉄棒で乳首のマスターベーションをしているつもりだ。 身体を揺らして乳房を弾ませ、鉄棒に乳首を擦りつける姿は、情けなくて恥ずかしい。 笑いモノにしてくれればと切に願う。

「ハイッ、ハイッ、ハイ、ハイ、ハイ!」

 ただ、ここで終わるわけにはいかない。 本気で『芸』のマスターベーションをする以上、しっかり絶頂して首輪を光らせなければ。 

「ハイッ、ハイッ、ハイ、ハイ、ハイ!」

 この1週間に達したイメージを反芻する。 PC教室で、HR教室で、第2グラウンドで、大教室で……数えきれないほど達してきた。 そのうちの9割が、本心を偽って昂ぶらせた、虚構の自慰と絶頂だ。 乳首という弱い性感帯で、しかも先輩に試されている状況であっても、

「ハイッ、ハイッ、あふ……あぅん、んっ、ハイ、ハイ、はっい……っ」

 鼻声に媚びをまじらせる。 懸命に脳裏へピンク色のイメージを拡げ、

「あっんっ……んんんっ」

 思いきり乳房を上にたゆませ、バシン、一気に落して鉄棒に叩きつけた。 肌にささる痛みと冷たさが相俟って、

「んうーー……ッ!」

 達する絶頂と、ピピッ、点灯する首輪。

「んっ、はあっ、はあっ、はあっ」

 恐る恐る先輩の様子を伺うと、無表情ばかりだった顔に薄っすらと笑みが張り付いている。 純粋な笑いというよりは、苦笑や嘲りに近いかもしれないけれど、それでもいい、十分だ。 

「ありがとう……ございます……」

 上半身を揺する運動と余韻で火照る身体を鉄棒にもたれさせる。 錆びた鉄特有のごわごわした肌触りと、体温を吸いとる冷たさ。 何ともいえずこそばく感じた。

 

 


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