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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 潜水 〜-1

〜 潜水 〜



 消灯時刻を迎えると、それまで微かにザワついていた建物全体が瞬時に鎮まる。 寮監室に移るいくつものモニターが暗転する。 赤外線モードに切り替わる僅かの間は何も見えないが、やがてそれぞれの個室や、廊下や、食堂の様子がぼんやりと浮かんでくる。

「んん〜〜」

 寮監室の中央。 私は椅子に座ったまま組んだ腕を真上に伸ばし、肩ごと大きくクルンと回す。 新入生の入寮初日は、毎年問題がおきないかモニター越しに目を光らせているので、この時刻になると肩が凝ってしまう。 実際の段取りや指導は寮長を筆頭に寮生まかせなわけだが、それでも最終監督責任は寮監たる私持ちなので、気は抜けない。 

 今年はA・Bグループ生ともに定数通りなこともあり、スムーズな進行だったと思う。 年度によっては先輩が少なすぎて、1人のBグループ生が3人も新人を抱えたりすることもあった。 あとは寮長が優柔不断だったり、副寮長が寮長ばかり見て新人に厳しすぎたりと、バランスが悪い年度はいくらでもある。 そういう意味で、今年は先輩の性格も適度にバランスがとれている。

「さてと……私のお仕事は、と」

 手許には寮長から渡されたメモがあった。 なんでも入寮の挨拶に滞りがでたので、B30番に『額縁』を命じたという。 解除はどうしましょうと聞いてきたので、私自ら解除すると伝えた。 寮長に任せてもよかったのだが、あまり任せすぎて独断専行されては修正が面倒だ。 仕置きの始末だが、10年近い私の経験からいうと、寮監自身が関与した方が寮運営は上手くいく。

「見回ってからにしましょうか。 急ぐこともなさそうだし」

 懐中電灯片手に廊下にでる。 消灯時刻を過ぎた寮では原則として寝息以外は認められない。 
 Aグループ生を含め、すべての部屋をあけるマスターキーを持っているので、気が向いた部屋を開けてみる。 B・Cグループ生の部屋は一段と静かだった。 特に新入生は疲労の極致にあることだろう。 もしも起きている気配があれば、規則違反の確証があろうがなかろうが、気分で懲罰を執行するし、難癖をつけることもできる。 けれど理不尽な懲罰は寮の荒廃にも繋がるわけで、私としては本意ではない。 結局は廊下を見回り、1つか2つ部屋を覗き、寮監室に戻るのが夜回りのパターンになっていた。

 一通り見回った帰りの食堂。 懐中電灯で中央の壁を照らすと、肌色の肢体が微かに揺れた。
 ガラスケースの額縁に詰め込まれたB30番。 ケースの上には『電柱に小便する牝犬』という御大層なタイトルがある。 片脚をあげて小便を飛ばす姿勢は、実は『雄犬』の専売特許だ。 牝犬は両手両足をついて上半身を起こした姿勢で小便をする。 となると彼女は厳密にいえば間違っているが、片脚をピンと伸ばしている方が面白いので、あげつらうのは止そう。 
 寮長の報告通りなら、彼此4時間近くこうしているのだから、指導としては十分だ。 というわけでマスターキーを用い、ガラスケースへの入口を開く。 中のB30番に見えるよう顎で出口を示すと、ヨタヨタと無様に足をひくつかせて、狭いガラスから這いでてきた。

「何か言うことがあって?」

「ご……ご指導ありがとうございました」

「よろしい」

 どんな内容であっても、私への礼を忘れてはいけない。 寮の大原則である。 
 B33番は土下座して礼を述べたのち、上目遣いに私を見た。

「あの……寮監様。 これから掃除をして、部屋に戻るということで、宜しいでしょうか」

「……」

 ガラスケースからでてくるなり、アンモニア臭が鼻をつく。 そうか。 ケースの中で放尿して、そのまま放置する指導だったのか。 ケースは自分で掃除すればいいが、本人はこのままでいいだろうか。 そういえば私はまだお風呂に入っていないし、B30番も入浴時間を過ぎている。
 
 いいことを思いついた。 私の身体を洗うという名目で、B30番を入浴させてあげよう。

「貴方せっかくだから、私の身体を洗わせてあげましょう。 一緒についてらっしゃい」

「えっ……!? そ、それというのは、御入浴に御伴させていただけるということでしょうか……」

「特別よお。 そのままお布団に入ったんじゃ、どうにも気持ち悪いんじゃないかしら」

「えっと、あの……は、はい」

 懐中電灯を当てる。 こちらの質問に答える場合、眩しかろうと土下座する姿勢だろうと、視線をそらすことは許さない。 こちらを見上げる二つの瞳。 ほんの僅かだが泳いでいる。



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