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バリ島奇譚
【SM 官能小説】

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バリ島奇譚-6

あのとき、初めて出会ったカワシマもそうだった。彼は東京に恋人がいた。結婚を予定している
恋人がいるというのに、ユリエの前で跪き、ユリエへの奉仕を囁いた。あのとき、彼が最初に唇
を寄せたところはユリエの唇ではなかった。彼女の足元に跪いたカワシマは、彼女の足首とハイ
ヒールの先端に接吻をした。ユリエはカワシマを無性に支配したかった。だから彼の肉幹と陰嚢
の根元を締めあげる鋼のペニスリングを嵌め、鍵をかけた。それは、ペニスの勃起を抑制する
貞操帯と言えるものだったが、ふつうの貞操帯と違うのは、リングの内側に鋼の棘がつけられ、
ペニスが勃起するほどに棘が包皮に突き刺さり、鋭い痛みを伴うものだっただ。そして、ユリエ
は部屋に置かれた犬小屋のような鉄檻にカワシマを入れたのだった。

あのときカワシマに吐いた言葉が、ビィラの外から吹いてくる湿った海風とともに脳裏をよぎっ
ていく。

…私のプレイって、あなたが考えているほどのお遊びじゃないのよ。あなたがどこでどんなプレ
イを楽しんできたのかは知らないけど、あなたはあなたのすべてをかけて私に尽くさないといけ
ないのよ。あなたがあなた自身であることができるのは、あなたが私に心から隷属することなの。
私はあなたに鞭の快感で射精なんてさせないわ。そうよ、私は、あなたのペニスに嵌めた貞操帯
のリングの棘の痛みを、あなたが愛おしく感じることができる心とからだにしてあげることだわ…

…あなたが私のものになるということを考えたことがあるかしら。私がこの鞭であなたをどんな
に打ち叩いても、あなたはその憐れなペニスを硬くして悦んでいる。自分ために。そうなのよ。
あなたはいつも自分自身の快楽のためだけに鞭を必要としている。ほら、私をちゃんと見るのよ。
そして、恋人を裏切って私を愛しているって言ってごらんなさいよ。あなた自身の嘘と欺瞞の
心地よさを感じないかしら…

…檻から出してくれって。出してあげたら、どうしたいっていうの。鍵のかかった貞操帯に支配
された憐れで恥ずかしいそのペニスで、恋人とセックスをしようっていうの。笑ってしまうわね。
貞操帯で嵌められたペニスで勃起なんてできないでしょう。もちろんあなたは射精なんてできな
いわ。私が鍵を外さない限りね。その貞操帯の鍵は私が持っているのよ。鍵のある場所は私しか
知らない。あなたが愛おしい恋人のためにその貞操帯を外そうと思ったら、そのペニスを自ら手
にしたナイフで切り落とす方法しかないのよ…


血色に染められた原色の眩しい黄昏の光が部屋の中を煌々と照らし出す。ユリエがふと目をあけ
たとき、クトゥのしなやかな体が覆い被さってくる。彼の背中にまわした彼女の掌がさらさらと
した彼の体液で湿ってくる。ユリエは彼を強く抱きよせた。彼の薄く柔らかい唇が彼女の頬を
撫でるように這い、唇をとらえる。重ねられた唇の中からほのかな熱をもった吐息がユリエの中
に欲情を注ぎ込む。

…うっ…んんっ…ううんっ…

クトゥの潤んだ舌先が、ユリエの下唇をなぞりあげながら絡んでくると、それに感じたように、
彼女の足先の指がすっと伸び、そり返る。彼は彼女の唾液と吐息を貪るように吸い上げる。

彫の深い顔立ちとは違って、彼のしなやかなからだは筋肉でもなく、柔らかすぎるほどの肌でも
ない。肌理の細かい肌は蜜のような光沢を放ち、微かに湿っている。彼の舌が首筋をゆっくりと
這い下がり、乳房のすそ野からゆるやかに乳首に向かって駆け上がってくる。彼の腹部がぴった
りとユリエの脇腹に寄り添い、彼の掌が乳房の弛みを包み込み、蕩けるような唇が乳首をそっと
含む。


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