dream・road〜scene-2nd-9
(マリアが…?)
身体中の痛みが抜けて、否、気にならなくなる。恐怖の感情は消え失せ頭に浮かぶのは怒りのみ。
「どけよ…」
『レイラ様…車にお戻りを!』
『大丈夫よ。夜叉、相手を』
「うぉおおお!!」
龍矢は地面を蹴り、二人に突っ込んでいった。それは、今さっきまで恐怖に支配されていた男ではない。まさに獣だった。
「ガアアァッッ!!!」
龍矢はレイラを護るように立ちはだかる、鬼夜叉に向かって拳を振りかぶった。
理論なんて微塵もない、ただの腕力任せのテレフォンパンチ(予備動作が大きく、相手にわかってしまうようなパンチ)だが、鬼夜叉は龍矢の圧倒的なまでの気配に気圧されていた。
(なんと…!先程とはまるで別人の闘気!)
鬼夜叉は両の掌を重ね、顔の前に構えて龍矢の拳を受け止めた。
『ぬぅっ…!』
体ごと吹き飛ばされたが、鬼夜叉はすぐに体制を立て直した。しかし、目の前には二の太刀を放とうとしている龍矢の姿が。
(避けられんっ!!)
ゴキィッ!!
全ての力を込めた龍矢の右拳は、鬼夜叉の顔面にめり込んだ。
ピシッ…。
鬼夜叉の面にひびが入る。鬼夜叉の体から力が抜けていく。
「ガアァアッ!!」
地に向かい墜ちていく鬼夜叉の体を龍矢は許さなかった。
左の拳を腹に打ち込み、鬼夜叉を体ごと浮き上がらせる。
反射的に跳ね上がった顔面に止めの右拳を撃ち込んだ。
鬼の面が無惨に砕け割れ、鬼夜叉は今度こそ地面に体を預けた。
「はぁ…はぁっ…」
龍矢の目に元の輝きが戻る。足下には鬼夜叉がうつ伏せに倒れていた。
「俺が…やった…のか?」
『そうよ』
半信半擬の龍矢にレイラは声をかけた。あの激闘の最中に逃げ出さず、一部始終を見ていたこの女性の胆力は凄まじいものである。