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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-2nd-10

「レイラさん!!マリアは!?」
『ああ、あれ?あんなの嘘よ』
「なっ…!」
『私は試したの。彼女があなたの《引き金》になるかどうか…私だってマリアは可愛いもの、そんなことはしないわ』

レイラの言葉を真実と受けとり、龍矢は体から一気に緊張が抜けていくのを感じた。

『いくらあなたの力を引き出すためとはいえ、あの子をだしに使ったのは悪かったわ。ごめんね』
「いえ…」
『でも、これで判ったはずよ。あなたに足りなかったものが』
「足りなかったもの…?」

ミゲルに言われたことと同じことを言われ、龍矢は少なからず困惑した。
自分では決して勝てないと思っていた鬼夜叉に勝ったのは、マリアが襲われたという怒りから来ていた。

『あなたに足りなかったもの…それは信念よ』
「信念…」
『あなたのマリアを護りたいという気持ちが、今の結果を呼んだの。それは大切な人を守る本能…守りの野生よ』
「守りの野生…」

レイラは柔らかく微笑むと、龍矢にさらに語り始める。その笑顔は先程のような挑戦的なものではなく、純粋な笑みのように龍矢は見えた。

『愛する人を守るための強さ…それはとてもすばらしいことよ。忘れないで、あなたは一人で闘っているわけじゃない。みんなもあなたと一緒に闘っているの…。』
「…」
『あなたは、誰のためにその拳を振るうの?』

レイラの言葉は、龍矢の胸に染み渡っていった。



最初のうちは、ただ強くなるために、自分のために闘っていた。

けど今は違う。自分のことを応援してくれている沢山の人…ミゲル…ダニー…そしてマリア。
今はこの愛すべき人々のために拳を振るっているのだ。
みんなの笑顔を見るために闘っているのだ。

「俺は…」
『もう今のあなたなら大丈夫。あなたは何のために拳を振るうのか判ったのだから、もう迷わないわ』
「レイラさん…」

その時、足下に倒れていた鬼夜叉が起き上がり始めた。どうやら意識が戻ったらしい。

『少々…気が飛んでいたようですね』

鬼夜叉は起き上がると、龍矢に面の下の素顔をさらした。

「…!」
『…初めて見る方は誰でも驚かれます。お気になさらず』

鬼夜叉の顔にはおびただしい切創と、火傷の痕があった。首元からシャツの中にまで痕が続いている。それは身体中に傷があることを物語っていた。

『昔、ファミリーの鉄砲玉をやっていたときに相手側に捕えられまして…そんな私を、旦那様は拾ってくれました』
「だから…」
『はい、私の拳は旦那様のために…それが私の信念でございます』

鬼夜叉の話を聞いていると、公園の入り口の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「タツヤ〜!どこにいるの〜!?」
「マリア!?」

マリアの声を聞いて、レイラと鬼夜叉は公園を後にしようとした。


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