dream・road〜scene-2nd-8
「レイラさん…!?」
林の中から現れた女性は、マリアの働くシアターの先輩…レイラだった。彼女は龍矢を軽く一瞥すると、鬼夜叉に話しかけた。
『よくてこずらなかったわね。かなり強いって聞いたんだけど?』
『…中々の強者にございます』
鬼夜叉とまるで知人のように話しこんでいるレイラに、龍矢は渾身力を使って言葉を発した。
「…なんで、レイラ…さんがっ…!?」
『ふふっ、タツヤ。私もあの人の仲間なの…』
「なっ…」
『私があの人から言い渡されたのは、あなたの身辺調査と、《引き金》を探すこと…』
(引き金…だと?)
鬼夜叉に殴られた腹をかばいながら、龍矢は立ち上がり二人に向き直った。
鬼夜叉にやられた腹が、立ったことによる筋肉の伸縮で悲鳴をあげる。
「なんで、カイはこんなことを!」
『あなた…自分がどれだけあの人を縛っているか分かる…?』
「え…?」
まるで独り言を呟くように、レイラは龍矢の疑問に答えた。
『彼は、あなたを待っていた。自分の願いを叶えるために…』
「願い…?」
『あなたと闘い、過去を断ち切ること…それがあの人の願いよ』
話が見えてこないために、話に突っ込めない龍矢はただ黙ってレイラの話を聞いた。
『彼にはね、もう時間が残されてないの…その前に、あなたと闘いたいのよ』
「時間…?」
『……彼は有名な会社の三男に生まれたの。長男、二男ともに会社を継がない今、あの人しか継ぐ人がない…』
話すのが辛いのか、レイラの顔が少しずつ苦痛に歪み始める。
『彼はあなたと闘うまでボクシングを続けさせてもらうことを条件に、会社を継ぐことを決めたわ…』
「…!」
『判る…?アレンはね、あなたのせいで人生を縛られているの。』
アレンというのが、カイの本名だろう。龍矢は感じていた。レイラはアレンを…カイを愛しているということを。深い感情をを抱いた相手じゃなければ、あそこまで苦しい顔はしない。
『私は…彼を愛している、彼のためなら死んでもいい。だから、彼の命令は必ず聞くわ。…』
「…!」
彼女の決意に、龍矢は息を飲んだ。そしてレイラはゆっくりと、絶望の言葉を吐き出した。
『最近…マリアと一緒に暮らしてるんだって?聞いたわよ』
「……まさか」
『今頃、どうなってるかしらね…?』
レイラは薄く笑い、まるで挑発するような目つきで龍矢を見た。