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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-2nd-7

『ボクシングを始める前の貴方ならば、こんなに悠長に私の話をお聞きにはならなかったでしょう…』
「…くっ!」

龍矢は足を必死に動かそうとしたが、まるで足が大地に根付いてしまったかのように、少しも動かなかった。

『これは試合ではありません。死合いなのです…』

鬼夜叉は初めと同じように、両腕をだらんと下げた構えをとっている。
隙だらけ…故に隙がない。

龍矢が攻めあぐねていると、鬼夜叉は龍矢へ向かって大股で歩を進めてきた。


龍矢は怯んでいた。
さっきの一合(一通りの対決)で鬼夜叉の実力と自分の力を推し測り、今の自分では決して勝てないと知ったのだ。

決して勝てない相手がこちらへ来る…龍矢の心の牙は、音をたてて砕け散った。



「くっ!」

龍矢は腕を上げ、守りを固めた。
何時もならば決して防御などしない。しかし、心が折れた龍矢には今はこれくらいしか思い付かなかった。

『…無駄なことを』

鬼夜叉が間合いに入り、拳を振るう。鬼夜叉の拳は龍矢のガードをすり抜け、顔面へと入った。

燃えるような痛みと、視界の明滅が起こった。
頭が機能しなくなり、次いで呼吸が出来ずに龍矢はむせかえった。鼻血によって呼吸が困難になっていたのだ。息苦しさと恐怖が、龍矢のガードを徐々に下げていく。
鬼夜叉は、ガードの上から何発も拳を繰り出した。
ガードを叩き、あるいはそれをすり抜け龍矢の顔を、体を、心を痛めつけた。

何発も拳を打ち込まれ、龍矢の心には恐怖が広がっていた。

(ちくしょう…ちくしょう!!何も出来ねぇ!)

龍矢はただ自分を守るので精一杯だった。それでも鬼夜叉の攻撃は止む気配が無い。

ズドッ!!

鬼夜叉の拳が龍矢のみぞおちをえぐる。
衝撃と反動で思わずガードが下がった。

「ガハッッ!!」

龍矢は両膝を地面に落とし、そのまま倒れこんだ。

「ぐっ…が…!」

グローブなしのフリーファイトとは言え、衣服の上から腹部を叩き龍矢を地面に這わせた鬼夜叉の実力はかなりのものである。

龍矢は顔をあげ、鬼夜叉を睨みつけた。しかしそこから反撃する気力が湧いてこない…。

『無様なものね…』

突如、林の中から声が聞こえた。龍矢は頭を声の聞こえた方へ向けると、その声の主に驚愕した。


腰まで届く長く美しいブロンドの髪。まるで計算されたように整っている顔立ち。
そして、人の心を奮わせるハスキーな声を持つ女性を龍矢は知っていた。


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