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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-2nd-6

(…!!)

鬼夜叉は龍矢の拳の射程寸前で止まったのだ。
拳に来るはずの手応えの無さと、自分の考えを読まれた焦りが龍矢の挙動をわずかに遅らせた。

ブンッ。

横から聞こえる空気を切り裂く鈍い音…。
咄嗟に龍矢は両腕を上げて顔をガードした。

ゴガッッ!!

同時に腕に洒落ではない衝撃が加わる。

腕は熱を持ち、鈍い痛みを放ちながらガードごと吹き飛ばされた。余りの力に龍矢の体が横にずれてゆく。
鬼夜叉の追撃をまぬがれるために、龍矢は後ろへ跳び体制を立て直した。



『…まさか蹴りがくる。などとは、思っていませんでしたか…?』

図星だった。龍矢は相手は拳で来ると確信していたのだ。それは喧嘩から離れ、ボクシングを始めたが故の経験からきていた。
加えて言えば、ボクシング試合では必ずライトが入る。夜の闇の中で人と拳を交えるのは随分と久しかった。

昔ならば、拳、蹴り、はたまた何かしらの凶器をどこから出してくるのか…考えるのは容易だった。

喧嘩の経験とボクシングの経験の違いを今まさに、身をもって龍矢は体感していた。

『…貴方のボクシングは、リングの上だけのものなのですか…?』
「…んだと?」
『貴方はどこかで、喧嘩とボクシングに線を引いている…私たちがしているのは喧嘩でしょう…。ボクシングの理屈で考えてはいけません』
「…るせぇっ!!」

龍矢は鬼夜叉の言葉を断ち切るように突っ込んでいった。

間合いに入ると同時に、左のジャブを放つ。二発、三発、四発…。加速の乗った龍矢の拳を、鬼夜叉は難無くかわしていく…。

(何でだ…何で当たらねぇっ…!)

さらに踏み込みを強め、渾身の左ジャブを出す。十分に体重の乗ったそれは、ジャブと言うよりストレートになっていた。
体重の放った拳は、綺麗に鬼夜叉の仮面へと突き進んでいく。

ゴッ!!

龍矢の放った拳は当たりはしたものの当たりが浅く、クリーンヒットとまではいかなかった。

今度は鬼夜叉が後ろへと下がり、距離をとった。

『ボクサーとしての完成度は中々でございます…。しかし、今の貴方では旦那様はおろか、私にも勝てません…』
「やってみなくちゃ解らねぇだろうが!」

龍矢はもう一度鬼夜叉に突き進んでいこうとする龍矢を片手を突き出して制し、鬼夜叉が口を開いた。

『貴方は心のどこかで、拳を壊したくないと思っていらっしゃる…』
「なに!?」
『貴方は、心のどこかで絶対に殺されはしないと思っていらっしゃる…』
「…そんなことは!!」

龍矢は足を動かすことが出来なかった。そんなことには構わず、鬼夜叉の話は続く。


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