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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-2nd-5

「あんたがカイの代理ってことはわかった。一体俺に何の用だ」
『…旦那様は、貴方様がアメリカへ来たことに大変感動なさっていました…』

鬼夜叉は、仮面から漏れる不透明な声で話し始めた。

『旦那様は、アメリカに戻ると同時に世界各地に修行へ出ました…。イギリス、メキシコ、オランダ、ロシア…様々な場所で強者たちとの闘いを繰り返してきました』

「……」

龍矢は黙ってカイの今までの事を聞いていた。

『修行を終えた旦那様は、この国へと戻ってきたのです。全ては夢を叶えるために…』
「あんたはどうやってカイと…」
『……』

鬼夜叉はなにも答えなかった。

『今日私がやって来たのは、旦那様に言付けられたからにございます…』
「何…?」
『貴方様が旦那様と闘うに相応しいか…力を見るためにやってきたと言えばいいでしょうか…』

龍矢は薄く笑うと、拳を上げながら鬼夜叉に向き直った。

「最初からそう言やぁいいじゃねえか。まどろっこしく言いやがって」
『失礼を…』
「用はあんたをぶっ倒せばカイに会えるんだな?」
『その通りにございます…』

鬼夜叉は両腕をだらんと下げたまま、動こうとしない。
普段の龍矢なら、怒声の一つも浴びせるだろうが、そういう訳にはいかなかった。

(隙がねえ…!)

相手は構えていない。ただその場に立っているだけだ。しかし、龍矢にはまさに刀を構えた鎧武者が鬼夜叉の背後に見えた。
まだ春先とはいえ冷たい空気の中、龍矢の額には大粒の汗が浮かんでいた。
鬼夜叉の闘気はまるで日本刀のように研ぎ澄まされているのが判る。

『来ないのならば…』

鬼夜叉はぼそりと呟いたかと思うと、凄まじい速度で龍矢に迫ってきた。

(速っ…!)

5、6メートルの距離を一足跳びで詰めてきたのだ。
一瞬にして鬼夜叉が接近してくる。だが、龍矢はその一瞬の間に考えをまとめた。

(カウンターで落とす!)

龍矢は拳の速度なら負けない自信があった。鬼夜叉が自分の間合いに入った瞬間に、渾身の右を入れる…。
相手は勢いを殺さずに向かってくるだろう。そこに拳を叩き込めば、ただでは済まないはず…。

鬼夜叉の体が龍矢に肉迫する。

(いけぇっ!)

腰が回り、腕が伸びてゆく。その拳は鬼夜叉の仮面を捕えた…はずだった。


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