dream・road〜scene-2nd-3
去年の夏、龍矢とマリアはお互いの気持ちを確かめあった。
二人は今まで別々に暮らしていたが、家賃が少なくなるということで(マリアが半ば強引に)龍矢のアパートへと引っ越してきた。
同棲を始めて、もうかれこれ三ヶ月ほど経っている。
「ふっふふ〜ん、ん〜ん〜」
リビングで食事のためにテーブルを片付けていると、マリアが鼻唄まじりで料理を運んできた。
「なんかいいことでもあったのか?」
「ふふっ!聞きたい?」
「いや、別に…」
「ウソだよ!タツヤ聞いてよ〜!」
二人で小さなテーブルを囲んで食事をとる。マリアの料理の腕は絶品だが、二人でとる食事は腹だけでなく心まで満足になる。
「ボクね、今度の舞台で前座を任されたんだ!スゴイでしょ!?」
「へぇ、凄いじゃねえか!よかったな」
「うん!レイラさんがね…」
コン、コン。
食事も終わり、二人でしばらく談笑していると、誰かが入口の扉をノックする音が聞こえた。
龍矢はテーブルから立ち上がり、扉に手を伸ばした。扉を開けると最近入ったジムの後輩が立っていた。
『こんばんは!』
「どうしたんだ?」
『今日、タツヤさん宛てに手紙が届いていたんで、届けに来ました』
「ん、サンキュ」
後輩から手紙を受け取り、二、三言ほど話すと後輩は部屋を後にした。
(なんだ…一体)
龍矢がアメリカに来てから知り合ったのは、ジムメイトとカフェの人達。それとマリアぐらいだ。そのなかに、自分に手紙をよこす人など考えがつかなかった。
おもむろに便箋(びんせん)の封を切り、龍矢は手紙を読み始めた。
(……っ!!)
その手紙には信じられない内容が書かれていた。
「タツヤ、どこ行くの!?」
「悪いな、急用が出来た。遅かったら先に寝ててくれ」
龍矢の『急用』と言う言葉と、ただならぬ気配にマリアは感付いた。
「お願いだから、危ないことだけはしないでね…」
「わかってるよ。じゃあ、行ってくる」
龍矢はマリアにそう言い残すと、足早に部屋を出ていった。
(何があったんだろう…)
龍矢の交友関係は大体マリアも知っている。カフェの人達からの用なら、自分の耳にもなにかしら入ってくる。そうじゃないとしたら、龍矢のジムのことなのだろうか…。
テーブルの上には、龍矢が今さっき見ていた手紙がある。
(少しくらい読んだっていいよね…)
マリアは龍矢に多少の罪悪感を感じながらも、テーブルに座り手紙を読み始めた。