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dream・road
【青春 恋愛小説】

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dream・road〜scene-2nd-12

しかし勝負の世界は残酷だ。喧嘩であれボクシングであれ、本質は一緒…最後に立っていた奴が勝者なのだ。
そこに、手加減だの言い訳だのは通用しない。
勝利というものは、勝者を精神的に強くする。今まで弱者に位置付けられていた者が、一つの勝利で獅子へと変わるのだ。もう、鬼夜叉では今の龍矢は止められないだろう。

もしかしたら、鬼夜叉は敢えて自分の踏み台になってくれたのかもしれない。自分をカイと同じ高みへと引き上げるために。

(考えすぎか…)



アパートに戻り部屋の電気をつける。
部屋に自分一人しかいないことが寂しい。
いつもなら、寝る前に今日あったことを話し、二人で笑いあいながら眠る。
そして、朝起きたときに自分の隣で眠るマリアの寝顔を見て、一日が始まるのを感じるのだ。

マリアと暮らしてまだ三ヶ月…たったの三ヶ月なのに、龍矢の中にはかけがえのない存在になっていた。

「マリア…」

己の無力さと、孤独への不安を感じながら、龍矢は一人眠りについた。




その夜、龍矢は夢を見た。
自分とマリアが、子どもに向かって微笑んでいる夢を…。



それは、夢が叶いし後の希望の日々なのか。それとも、夢に破れ、夢の残骸を噛み締めながら過ごす日々なのか…。

夢で見た自分の顔はどこかもの悲しげだが、同時に満ち足りたようにも見えた。



翌日、カフェを臨時休業したダニーと共に龍矢は病院へと向かった。


倒れたこと自体は大したことはなく、軽い過労と貧血が重なったものらしいので、今日一日入院していれば退院は出来るらしいのだが…。
龍矢は医師から信じられないことを聞かされた。



『二ヶ月目ですね』
「妊…娠…だって!?」
『…彼女は元々体が強くない上に体がまだ未発達。その状態で妊娠したことにより、こんなに早くから体調が崩れてしまっているのでしょう』
「そんな…!」
『もしこの状態が長く続くようなら、母体への影響が心配です』



龍矢は今までにマリアを抱いたことは何度かあった。しかし、危険日などは外していたし、そもそも龍矢もマリアも体力を使う仕事のため、そんなに盛り狂うほどではなかった。

龍矢が医師からの話に頭を抱えていると、誰かが部屋のドアを開けた。部屋へと現れたのは、看護士に連れられたマリアとダニーだった。
「話…聞いてたのか?」
「うん、廊下で…。ねぇタツヤ…ボク、産みたい!」
「…っ!バカか!?お前も中の子も危険になるかもしれないんだぞ…?それに、お前やっと前座がもらえたって言ってたじゃないか!!」
「今は舞台なんてどうでもいいの!ただ、ボクは…タツヤの赤ちゃんを…産みたい…!」

二人の話し合いを止めたのはダニーだった。


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