dream・road〜scene-2nd-11
『アレンに言っておくわ。引き金は引かれたって。行くわよ、夜叉』
『かしこまりました…では…』
「レイラさん…カイに言っておいてくれ。もう少しだけ、待っててくれってさ」
『…ええ、わかったわ』
二人が去った後、龍矢はマリアの元へと向かった。
「うわっ!?タツヤ!!なにその顔!?」
「ん?ああ、気にするなよ」
龍矢の顔は、鬼夜叉との闘いにより所々が赤く、青く、腫れ上がっていた。
しかし、そんな軽口を叩くマリアの顔はどこか覇気がない。
「マリア、大丈夫か?」
「ん…ボクは大丈夫だよ。龍矢こそ手当てしなくちゃ。さ、家に帰ろう」
あえて何があったのかを聞かないマリアの心づかいが、今の龍矢には嬉しかった。
会話を切り上げ、二人は家路につく。しかし、マリアの動きがひどく緩慢なのだ。龍矢は多少の不安を感じ、もう一度マリアに尋ねた。
「なぁマリア、本当に大丈夫か?」
「…」
「マリア…?」
「ん…?」
マリアが顔をあげてこちらを見つめる、その顔は、宵闇で隠されていても判るほどに青ざめていた。
「気分、悪いのか?」
「大丈…夫だよ…」
口では大丈夫と言っているものの、とてもじゃないが龍矢はそのようには見えなかった。
「今日は家に帰ったらさっさと寝ような」
「う…」
「マリア?」
マリアは、音にならないようなうめきを出すと、龍矢に体を預けてしまった。
「マリア!?」
龍矢は肩を掴み、容態を確認した。ひどく息が荒く、顔の青ざめ方も一層と強くなっていた。
「マリア!?マリア!!」
返事もない。龍矢は数瞬思考を巡らすと、マリアを背中に乗せて近くの総合病院へと急いだ。
鬼夜叉との闘いで負傷した箇所が激しく熱と痛みを持つ。しかし、龍矢は歯を食いしばりながら病院へと急いだ。
幸いにも救急受付は開いており、龍矢は事情を説明して看護士たちにマリアを預けた。
とりあえず今は自分がいたところでどうにもならないという説明を医師から聞き、龍矢は治療を受けた後、一旦家へと戻った。
あれだけの猛攻を喰らったにも関わらず、骨などに異常はなく、重傷箇所は少なかった。それは鬼夜叉が急所を避け、手加減をしていたということ証拠。それを龍矢は今になって知った。